2013 Fiscal Year Research-status Report
文化行動の生物学的起源:行動伝播の集団内実験による比較認知科学的検討
Project/Area Number |
25730092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70418763)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会学習 / 霊長類 / コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、ニホンザルなどを代表とした社会性の高いとされるヒト以外の霊長類での社会認知能力に焦点を当てて、社会学習能力などの様相を比較認知科学的アプローチにより明らかにすることである。おもに、オペラント条件付けを基本とした比較認知、比較心理課題を中心として、サルに訓練を施し、その学習過程を検討することが基本としている。今年度は、各種社会的な刺激を手掛かりとなる、象徴見本合わせ課題を実施していた。これは、その象徴見本合わせが形成される過程を知ることが基本的分析要素となりながら、次年度以降に続く個体間の学習伝播の検討に関して必要なステップと位置づけた。複数のニホンザルに見本合わせ課題を訓練し、単純な図形刺激に関しては学習が素早く進んだ半面、やはり社会的な要素が手掛かりになる刺激(サルの老齢の区別など)は、見本合わせはなかなか進まなかった。見本合わせの過程では、社会的刺激などの非物理的なラベルをもとに認知判断をすることがむつかしいことは、先行研究でもわかっており、それを支持する結果となった。すなわち、この手続きをベースとする課題では、物理的な手掛かり(色や形など)を複合要素とした訓練が、次年度以降の手掛かりの伝播過程を検討するうえでは重要と推察された。また、それと並行して訓練を要しない社会的な刺激の判断をさせる実験系として、視聴覚選好注視法を実施して、今後の実験に利用できる可能性についても探った。社会学習を考慮しない単純な実験条件で、サルの警戒音声と捕食者に対する自発的なマッチングを検討したが、どうやらそれは確認できるようだった。今後、社会的な経験の有無を検討して、その音声ー視覚刺激が示す表象のマッチングが引き起こされるかどうかなどを検証するような、新たなプロジェクトに対しての見通しを立てることも可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すべてが計画通りではないが、他のサブテーマの発見や進展もあった。論文生産という意味では、ぬかりなく達成できている点からして、順調であると言ってよいと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
手段を問わず、社会学習にかかわる実験を適宜取り組む。昨年度は、個体ベースの社会刺激判断や、プロトコール確立に時間を費やしたのもあり、今年度は社会学習が分析キーワードとなるような実験を速やかに講じていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は大規模な社会学習実験のための装置を開発する以前に、個別個体の訓練に時間をかけたため、予算が必要となる計画を26年度に大部分回す決断をした。したがって、予算が次年度に引き継がれた。 今年度は計画通り大規模な実験や実験装置を購入していく予定であり、予算は計画通り消化されることとなる。
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Research Products
(3 results)