2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25730094
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
長岡 千賀 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (00609779)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熟達 / セラピスト / 認知科学 / 声掛け |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,セラピーを施行するセラピストの認知プロセス,すなわち,他者の様子からその人を理解し,その人の問題解決に向けて相互作用することが,臨床経験年数によって如何に変化するかについて,認知科学的アプローチを用いて,実証的に明らかにすることである. 平成26年度は,作業療法のセッションを主な題材として検討を行なった.これまで本研究ではロールプレイのセラピーしか扱えなかったが,作業療法を扱うことにより,現実のセラピーを題材とすることが出来る. まず,セッションにおける活動の時間的構造の分析を分析した.熟達者複数名と非熟達者の間で比較することにより,熟達者の特徴を明らかにした.現在論文投稿準備中である.また,セラピストによるクライエントのへの言葉かけの分析手法の改良を行った.多くの事例に適応しうる分析手法の開発が完成しつつある(まもなく発表予定).さらに,身体接触を切り口とし,セッションの導入部の分析を行なった(投稿準備中).これらの検討から,療育者育成のための指針の洗い出しを行なっている. これらの検討は,従来型の,経験豊富なセラピストによる個人的体験に基づく定性的記述を主とした研究とは異なっている.今後さらに定量的分析や実験,教育効果の検証をすることにより,本研究は,認知科学における新しい熟達化理論の構築をもたらすと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のとおり,平成26年度には,活動の時間的構造,セラピストの声掛け,身体接触を切り口として検討を行った.多角的に分析することにより,教育効果の検証に必要なポイントは抽出することができたと考えている.また分析結果から,熟達者と非熟達者の違い,ならびに,熟達者間の共通点を見出すことができた. 当初計画では,平成27年度に教育効果の検証に着手する計画であった.現在,おおむね,それに足りる知見を得ていると考えているが,さらなる検討が必要な点もある.また,研究成果公開の機会を,平成26年度中に獲得することが出来なかった.こうした理由で,やや遅れていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は第一に,現在までの成果を公開する.平成26年度は多角的分析を行った.こうした成果を,論文や学会ばかりでなく書籍などでも報告する計画をしている. 第二に,教育効果の検証実験を行なう.効果の計測は,熟達した経験者による評価を用いることを考えている.これにさらに,教育効果に個人差がある場合の理由を追求し対策を講じるため,眼球運動計測器等の機器を用いて実験を行なう.この検討の成果を,分野の異なる研究者や,より一般の対人援助職の人たちに紹介することを目指している.
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Causes of Carryover |
当初計画では,新しい事例をいくつも収録しデータ整理するために人件費・謝金等が必要と考えていたが,方針を変更した.これまでのデータを多角的により深く分析することで得られる成果が大きいと考えられたためである.また,平成26年度には,成果発表の機会が少なかったため,旅費執行が減額した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には,第一に,平成26年度の検討の成果報告のための人件費・謝金,旅費を必要とする.第二に,これから教育効果の検証実験を行なうための人件費・謝金,ならびに,個人差追求のための機器購入(当初計画からの追加)のための備品・消耗品代を必要とする.
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