2013 Fiscal Year Research-status Report
アリの群知能を利用したグラフ構造プログラムの自動生成に関する研究
Project/Area Number |
25730149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
原 章 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (70347615)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 群知能 / アリコロニー最適化法 / 遺伝的プログラミング |
Research Abstract |
本研究は,群知能を用いてグラフ構造プログラムを自動生成する手法を提案することを目的としている.先に筆者らが開発したアリコロニー最適化に基づくグラフ構造プログラム生成手法Cartesian Ant Programming (CAP) では,プログラムの構成要素となるノードを格子状に配置した環境内をアリエージェントが行動する.しかし,各ノードに対して関数記号は固定的に割り当てられるため,問題に対する事前知識が必要という問題があった.平成25年度の取り組みでは,このCAPを改良し,探索状況に応じて各ノードへの関数記号の割当てを適応的に行うアルゴリズムを設計した. 提案手法である「ノードの置換を行うCartesian Ant Programming」のアルゴリズムの概要を以下に示す.アリエージェントの行動環境は,従来のCAPと同様に,あらかじめ用意した関数記号を各ノードに周期的に配置する.用意したノード群は探索を進める過程で,獲得プログラムの構成要素として利用されている接続ノードと,プログラムに利用されておらずプログラムの動作に影響を及ぼさない非接続ノードの2種類に分類できる.提案手法では,この非接続ノードに割り当てられている関数記号を問題解決に不必要な記号であるとみなし,その他の関数記号に置換する処理を行う.また関数記号が置換されたノードを利用して探索を行うようにフェロモン情報を調整する仕組みを導入した.このアルゴリズムにより,従来のCAPでは解の表現が困難となるノード数が少ない場合においても,適応的に関数記号の割当てを更新することで解の表現力を向上させることが可能となった.プログラム自動生成に関するベンチマーク問題である関数同定問題において,提案手法を従来のCAPや進化的手法に基づくプログラム自動生成手法Cartesian Genetic Programmingと比較し,両手法を上回る性能を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では,平成25年度の研究項目として次の3点を挙げた.(1)グラフ構造プログラムを自動生成するアントプログラミングの基本アルゴリズムの設計,(2)比較対象プログラムの実装,(3)提案手法と従来手法の性能比較.特に(1)では,従来手法がノードの種類や位置を固定して配置する必要があることの問題点を解決するため,汎用的なノードを配置し,そのノードにどの機能を割り当てるかについてもアリエージェントの選択によって決定する方法を検討することとしていた. 平成25年度に提案した手法「ノードの置換を行うCartesian Ant Programming」は,不要な関数記号ノードをアリの探索状況から判定し別の記号に置換する仕組みと,置換したノードをアリエージェントの以降の探索に積極的に利用するフェロモン更新の仕組みを導入し,よりプログラムの表現能力の高い手法を実現した.上記項目(1)のアリエージェントの行動評価およびフェロモンによる環境へのフィードバック方法の設計の観点から,従来の固定的なアリエージェントの行動環境設定を改善する新たなアルゴリズムが設計できた. 提案アルゴリズムの有効性の検証については,比較手法として,従来のCartesian Genetic ProgrammingおよびCartesian Ant Programmingに対して,関数同定問題を対象に実験を行っており,上記項目(2),(3)についても一定の成果が得られた.平成25年度内に達成できなかった論理関数合成やデータ分類などの他の問題においての有効性の検証は来年度の課題である. なお,この研究成果については,同年度内での学会発表は行えなかったが,平成26年度に国際会議等で進捗状況を報告する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画として,平成26年度は次の2つを研究項目としている.(1)探索空間の大きい問題における有効性の検証,(2)異種エージェントを導入した非均質なコロニーによるアントプログラミングの検討.平成26年度は,これらを実施すると共に,平成25年度の研究を進める過程で得られた以下のような新たな検討事項についても引き続き研究を進める予定である. 1つは,より汎用的なアリエージェントの行動環境の設計である.平成25年度に提案したアルゴリズムは,適応的にアリエージェントの行動環境を変更する手法であるが,探索序盤の関数ノードの配置は従来手法の設計を利用したものである.各ノードの接続関係だけでなく,関数記号の各ノードへの割当てまでをアリエージェントの選択に任せ,探索の序盤からより自由度の高い探索を可能とすることができるか検討したい. また,アリの群知能を利用したグラフ構造プログラムの自動生成については,近年,筆者らがこれまでに提案したCartesian Ant Programmingに基づいた新たな手法[1]の提案がなされている.これら最近の研究動向についても,比較手法等に取り込み,実験および有効性の検証を行う予定である. [1] Sweeney Luis and Marcus Vinicius dos Santos, “On the Evolvability of a Hybrid Ant Colony-Cartesian Genetic Programming Methodology”, Proc. of 16th European Conference on Genetic Programming (EuroGP2013), pp.109-120, 2013.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では,提案アルゴリズムの有効性をより探索空間の大きな問題で検証するため,当研究室が所有するロボットシミュレータソフトウェアを利用する計画であり,このソフトウェアの保守およびライセンス更新に必要な費用を計上している.平成25年度は,提案アルゴリズムの設計及び基本的なベンチマーク問題での有効性の検証までを行ったため,このソフトウェアに関する保守およびライセンス更新費は今年度は使用しなかった. 平成26年度は,提案手法の有効性を探索空間の大きい問題において検証するため,エージェントの行動制御問題に適用する計画である.今回生じた次年度使用額については,当研究室が所有するロボットシミュレータソフトウェアの保守およびライセンス更新費用として利用する.シミュレーションの同時実行可能数が上がるなど,最適化実験の実施効率の改善が期待できる.
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