2013 Fiscal Year Research-status Report
非線形発振器の結合系にみられる特殊な同期現象の新しい解析手法に関する研究
Project/Area Number |
25730152
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
山内 将行 広島工業大学, 工学部, 准教授 (40384169)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 同期現象 / 瞬時電力 / 位相反転波動 / 位相波 / 発振器の結合系 |
Research Abstract |
発振器の結合系などで観測される同期現象の、特に隣接した発振器間の位相差が伝搬し続ける位相反転波動と我々が呼んでいる特殊な波動現象や、位相差が伝搬するが消滅するか増幅して位相反転波動になる位相波のような、動的な同期現象に適用ができる電力を用いた新しい解析手法の開発を行ってきた。 梯子状に発振器を結合した系において、同相同期状態の中見られる位相波や位相反転波動などを含む波の様な複雑な現象を、瞬時電力を用いることにより、より詳細に調査が行えることを明らかにした。また、各発振器を構成する各素子の電力の変動を調査し、位相波と位相反転波動で瞬時電力の変化にパターンがあることを明らかにした。これらの結果より、短時間での判別が難しかった位相波と位相反転波動の判別が容易になったと言える。 また、実回路実験において、今までシミュレーションでのみ観測ができていた、2次元格子状に発振器を結合した系で、同相同期と逆相同期が交互に存在する交互逆相同期の中、縦方向と横方向に同時に伝わる位相反転波動の観測に成功した。また、縦方向が交互逆相同期状態で横方向が同相同期状態の中に存在する位相反転波動の、伝搬や角での反射のメカニズムについてシミュレーションを用いて明らかにした。 さらに、3次元格子状に結合された系において、シミュレーション上で交互逆相同期状態の中で存在する、位相反転波動の観測に成功し、伝搬のメカニズムと、面と辺、及び角での反射のメカニズムの解析等に成功した。 以上より、梯子状の系では、瞬時電力を用いて、より詳細な解析を行っただけでなく、瞬時電力のメカニズムの解析に一歩踏み込んだと言える。これらの結果は、動的な同期現象である位相反転波動の理論的な解析に繋がる可能性を示したと考えられる。さらに、2次元格子状、及び3次元格子状の系においては、瞬時電力を用いた調査を行う前段階の解析を進められたものと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
梯子状で見られる同期現象の一種であり、定常状態で観測できる特殊な波動現象である位相反転波動や、過渡状態でのみ見られる位相波について、今までの手法では分類が難しかった領域や現象にまで瞬時電力を用いることにより踏み込むことができることを明らかにできた。また、各発振器を構成する素子の瞬時電力の遍歴の調査も行い、位相反転波動と位相波では挙動が全く違うことまで明らかにすることができた。これらは、理論的な説明に繋がる大きな成果であるとも考えられる。 さらに、上記のように明らかになってきた瞬時電力を用いた解析結果や解析手法が、梯子状の時のみに対応できるものではなく、他の結合状態でも適用できることが重要である。すなわち、2次元格子上に結合された系や、3次元格子状に結合された系においても適用できるか調査を行う必要がある。そのため、2次元格子状の系での位相反転波動や3次元格子状の系における位相反転波動について、従来の手法でメカニズムなどを明らかにしておく必要がある。これらについても研究を進められたと言える。特に、実回路実験において、2次元格子状における位相反転波動の観測にまで成功したことは大きい一歩であると考えられる。 現状では、実回路実験は十分に進んでいないが、梯子状のみならず、2次元格子状でも位相反転波動の観測ができているため、実回路実験を用いた瞬時電力の解析に十分に繋がる結果を得ることができつつあると言える。 よって、本研究の目的に沿って、研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に研究は進んでいるが、実回路実験や、理論解析などについて、さらなる研究開発が必要である。実回路実験においては、素子の精度の向上や、回路基板の見直しなども進める予定である。そのため、基本的な梯子状、及び2次元格子状の系について主に研究を推進する。また、位相反転波動のような特殊な波動現象の理論的な説明を瞬時電力だけで行うのは難しいため、2、3個の発振器を繋いだ小規模な系における平均電力や有効電力、及び無効電力などについても理論計算を行い、これらとの比較やこれらの結果を用いることにより、さらなる理論解析への模索を行う。よって、平成26年度は、以下の内容を中心に研究を進める。 1. 梯子状の系において、実回路実験をさらに進める。さらに、シミュレーションを用いて交互逆相同期の中を伝搬する位相波や位相反転波動の瞬時電力などの電力の調査を行う。また、理論的な解析が可能であるか引き続き模索する。 2. 2次元格子状、及び3次元格子状の系に存在する位相反転波動などの従来の手法によるメカニズムの解析を引き続き行い、特に2次元格子状の系について、瞬時電力による解析が可能であるか調査を行い、実回路実験での電力の観測が可能であるか調査を行う。 3. 環状や梯子状を組み合わせた星型の系などにおいて、瞬時電力による解析が可能か模索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品は予定額よりも低い額ですんだが、国際会議に予定より多く採択され、その結果旅費が予定額よりも多くかかった。そのため、特にその他として予定していた学会登録料などの予算が足りなくなり、科研費からの支払いを断念したため。 平成26年度も、研究成果を学会でできるだけ発表していきたいと考えている。そのため、旅費が平成26年度も予定額よりも多くかかる可能性がある。よって、現在の旅費の予定額350,000円に17,369円を加算し、367,369円とさせて頂き、引き続き効率よく使わせて頂きたいと考えている。
|