2014 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児はどのように全体概念を認識するか?-認知実験から療育モデル構築まで-
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25730167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西山 雄大 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (90649724)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 全体性認識 / 意味形成 / 認知発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では,初年度に行われた社会的関係の理解についての6歳児と成人を対象に行われた認知課題(人形劇動画の分類および評価課題)の結果を,観測者の視点と他者性の観点から理論的に論じた国際論文を公表した.この議論を基に認知課題が改良され,意味形成の観点で研究が進められた.特に7歳(37名),9歳(35名),11歳(28名)の同じ小学校に通う児童および成人(24名)を対象に実施された認知課題では,意味の形成と調整の発達について次のような興味深い結果が得られた.9歳までは主に個別事象の集積として全体性を認識するのに対し,成人では主に少数の個別事象を帰納的に解釈することで全体性を認識し,11歳ではその中間的な認識をすることが示された.これらの認知様式はその調整においてそれぞれに強化や柔軟さといった利点があると思われる.以上のような認知様式の定型発達の特徴から,自閉症を含む非定型発達においては個別事象の集積としての一般化が徹底される可能性が示唆される.これを詳細に検討するためには他者とのコミュニケーション時の不随意的な反応と意識的な他者認識の関係を定量的に分析できる道具立てが必要であろう.現在のところ仮想コミュニケーション時に眼球運動を計測できる実験系を導入し,一人称視点のダイナミックな変化や被験者の動作を解析する試みを進めている. 本研究の当初の目的は自閉症の全体性認識の特徴を明らかにすることであったが,意味形成課題における定型発達の認知特性を明らかにすることを優先したため明確な実現には至らなかった.しかし少なくとも本研究成果から示唆される認知特性の多様性は今後の発達研究の広がりに貢献できるだろう.なお,児童と成人の認知課題に関する内容は現在国際誌へ投稿し査読中である.また本研究課題の成果の一部は海外の一般講演で紹介され,国際交流事業の一端を担うことが出来た.
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