2013 Fiscal Year Research-status Report
地方都市の観光需要拡大を目的とした風景画像の定量的評価とメロディー化
Project/Area Number |
25730168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Onomichi City University |
Principal Investigator |
川勝 英史 尾道市立大学, 経済情報学部, 教授 (40351837)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 画像のゆらぎ解析 / 自動作曲 / 観光需要拡大 |
Research Abstract |
本研究では,高速フーリエ変換(FFT)を応用して,次の2つの手法を提案している.(1)写真の「心地良さ」を定量的に計測し,(2)(1)の過程で分解された波を対応する音に変換することにより和音並びに曲を生成する.これらの方法により,観光スポットの写真を計測し,「癒しスポット」などの観光ルートを推奨したり,各スポットの写真からメロディーを生成したりすることができ,従来とは異なる視点から観光地の魅力を(観光客に)伝えることができると考えられる.これまで(1)の方法を改良しながら,尾道市における観光スポットの写真250枚について,(a)ホワイトノイズ,(b)1/fゆらぎ,(c)レッドノイズに分類する実験を行っている.これらの(a),(b)及び(c)に分類された写真には,主に次のような特徴が見受けられることも確認している.つまり,(a)細かい葉や花弁を有する植物が,写真の60%以上を覆っている.(b)自然と人工物(古い建物,石による建造物,石像など)が調和している.(c)海や夕焼けの情景が撮影されている.この結果について,本学美術学科の教員や学生に意見を求めたところ,尾道市の観光スポットが有する特徴を反映した分類ができているとの前向きな意見を得た.従って,本研究で提案した写真の分類方法が観光ルートを推奨する際に有効に機能していると考えられる. また,(2)の方法により生成した曲(原曲と呼ぶ)を,写真の特徴に応じてアレンジする(例えば,写真の暗い箇所から抽出された音は重くゆっくりと,明るい箇所から抽出された音は軽快に演奏する)ことにより,写真毎に異なったメロディーを再生することも実現している.ここまでの成果については,日本感性工学会の全国大会にて発表しており,今年度開催される国際会議(WCE2014)のプロシーディングスに掲載されることも決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画は次の通りである.(1)分析の対象となる写真の収集,(2)画像の定量的評価方法の提案,(3)DFAなどのFFT以外の方法を応用した画像評価方法の提案,(4)写真の色彩や明るさ,被写体の奥行きなどを考慮した画像評価方法の提案,(5)ファジィ理論におけるメンバシップ関数の画像の定量的評価への応用. これまでに,(1)の写真収集,並びに写真データを256階調のグレースケール画像に変換し,この画像を(1)及び(2)の方法により評価する方法の開発については,概ね計画通りに進んでいる.この一方で,(4)の評価方法を提案する際には,グレースケール画像に変換する前の画像におけるRGB値を用いた方法を構築する必要がある.既存の関連する研究の調査や,本学美術学科の教員や学生に対するヒヤリングにより,色彩(やその配置)と「心地良さ」との関係についてある程度把握できているものの,このような要因を考慮する場合には,パワースペクトル密度の振る舞いに応じて画像を評価する方法を適用するだけでは不十分である.(5)の方法も考慮しつつ,新しい画像の評価方法を検討する必要があるという点で課題が残っている.しかしながら,平成26年度の計画としてあげている,楽譜データの収集,和音抽出・和声進行決定方法創案,曲の特徴分析(曲の厚みに関する分析)に関しては,既に着手しており,これらのことも含めて総合的に判断した結果,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
上の【現在までの達成度】において,課題として示した画像の定量的評価法の改良については,これまでの調査結果を反映した成果が得られるよう,交付申請書にあげている研究協力者からの知識提供を受けながら引き続き継続していく. また,平成26年度の計画は,(1)楽譜データの収集,(2)和音抽出・和声進行決定方法創案,(3)曲の厚みに関する分析,(4)画像の特徴を考慮した音の装飾方法の創案,(5)曲のゆらぎ解析である.(1)については十分な数の楽曲を収集し,このうち70%程度をデータ化して入力済みであり,(2)についても概ね安定した結果が得られるようになっている.(3)については「曲の厚み」を定義し,定量的に求める手法を提案して,これを実現するためのシステムを開発できたので引き続き分析を継続する.(4)に関しては,研究会や学会報告の際に,画像から抽出した曲に対して「曲から画像をイメージできない」や「画像の定量的評価が中心であるため生成される曲はシンプルなものでよい」という意見を得ている.前者を解決しようとすると曲が複雑になり,後者のシンプルさを実現しようとすることと相反する.また,前者を追求するあまり「曲らしい」ものを生成してしまうと,かえって「作為性」を疑われることにもなりかねない.このため,次のような方法を検討している.すなわち,地方観光都市における風景画像については,画像の色の分布を調べることにより,被写体をある程度推定することができる(例えば,緑なら山,青なら海,赤なら社殿や鳥居など).写真に含まれる色に応じて,(2)で作成した「原曲」を移調することにより,被写体のイメージに沿った曲に編曲する.さらに,(5)の曲のゆらぎ解析については,既存のDFAを応用した方法により対応可能であると考えられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の残額が330,920円である理由については次の通りである. (1)予定していた国際会議に参加できなかっため,国内学会の発表に切り替えた.(2)データ入力やシステム開発補助に携わる人員が十分に確保できず,結果として人件費が大幅に節約できた(3)開発用ソフトウェアの購入を予定していたが,これまでの作業については旧バージョンで対応できたので購入を見送った.ただし,今年度はサポートの打ち切り等を考慮して,新バージョンのそれを購入する必要がある. 平成25年度の残額330,920円については,次の通り使用する予定である. (1)昨年度発表するはずであった内容(を拡張したもの)について,国際会議に参加して発表するために245,000円(4泊分)を使用する.なお,この内訳は,交通費(航空券他)150,000円,宿泊費(15,000円×4)60,000円,日当(7,000円×5)35,000円である.(2) 新しいバージョンの開発用ソフトウェアを50,000円で購入する.(3)昨年度の未入力分のデータを入力する人員やシステム開発補助に携わる人員を増加するため,人件費として40,000円を使用する.従って,総額は(1)+(2)+(3)=335,000円となる.
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Research Products
(6 results)