2013 Fiscal Year Research-status Report
副腎皮質機能不全において適切なステロイド補充量を提案する数理モデルの構築
Project/Area Number |
25730179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
青木 空眞 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (40584462)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ステロイド / クッシング症候群 / 副腎不全 / データマイニング / 基本的検査 / パターン認識 / ステロイド補充療法 |
Research Abstract |
血液の基本的検査値を複数組合わせることで副腎不全状態を予測できるモデルを構築した。検査項目は健常対照群49名および副腎不全患者群18名で多く測定されていた25項目の中から予測精度が高くなる組み合わせを選択し、結果として7項目(乳酸脱水素酵素[LDH], 血清Cl[Cl], HDLコレステロール[HDL-C], 単球数[Mono#], 赤血球[RBC], ヘモグロビン[Hg], ヘマトクリット[HCT])を組み合わせることで精度の高いモデル構築ができることがわかった。なお、モデルの構築にはパターン認識手法の一つである自己組織化マップ[SOM]によって教師なしの競合学習を行い、学習結果のマップを用いることで新規データの予測も可能としている。 この副腎不全を予測できるモデルと、従来の研究で明らかにしてきたクッシング症候群[CS]を予測可能なモデルを併せることで、最終的に13項目(γグルタミルトランスペプチダーゼ[γ-GTP], LDH, 血清Na[Na], 血清K[K], Cl, HDL-C, 好中球数[Neut#], 好酸球数[Eosi#], リンパ球数[Lymp#], Mono#, RBC, Hg, HCT)を組み合わせて構築したモデルによって、副腎不全とCSを同時に予測可能なモデル、すなわちコルチゾール過剰な状態と不足な状態を判断できるモデルを構築することができた。このモデルに実際のCS術後にステロイド補充療法を実施した患者8名の時系列検査データを当てはめて当時の患者状態を予測させたところ、予測結果と当時の臨床所見・入院状況は概ね一致したため、モデルの妥当性を確認することができたことから、本モデルを用いることで客観的な補充量指標が確立できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、健常者群、CS群に加えて副腎皮質機能低下症患者群のデータを新たに用いたことにより、基本的検査の値からコルチゾール過剰、不足を判定可能なモデルの構築に成功した。 また、データ管理において一元化を目指す取り組みについても、収集されたCS術後補充療法中の各患者における時系列処方情報は約47,000行に及んでいた上に出力形式も煩雑であったため解析の進度が当初少々遅れていたが、VBAマクロを作成することで非常に効率良く必要な情報を整理できるようになったため、データベース構築など次年度以降の解析へ向けて進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した予測モデルの妥当性を確認するために実施しているCS術後補充療法実施中患者における検査値時系列の予測について、現在のところ上述の通りデータが膨大かつ複雑であったため8症例のみの検討に留まっているが、必要な処方情報を適切に抽出するマクロの完成によって効率化が図られたことから、次年度は残りの32症例の時系列解析を行い、妥当性の検討をさらに進める予定である。 さらに、今年度構築した予測モデルは学習データにおける欠損値の問題から、欠損を許容する自己組織化マップによる手法のみを用いて構築したものであるが、今後実際にステロイドをどれくらい投与するとどのくらい過剰状態、不足状態に近づくかを前向きに予測する際には他のパターン認識手法であるサポートベクトルマシン[SVM]やベイズ正則型ニューラルネットワーク[BRNN]等の教師あり学習によるモデル構築も望ましい。この際は欠損値が存在すると学習が行えないため、次年度は欠損値補完の方法を各種試行しながら、SVM、BRNNによるモデルの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は学会発表を行った日本内分泌学会学術総会、並びに日本薬学会東北支部会がいずれも旅費を必要としない仙台で開催されたことから、旅費として使用する予定で計上した予算に余剰が生じた。 平成26年度は九州など遠方での学会も開催されることから、前年度余剰分は使用される見込みである。他、予定通り解析計算用のPCや統計解析ソフトのライセンスを購入して解析環境を一層充実させるとともに、現在論文投稿準備も進めているため、英文校閲料や掲載料としても使用する予定となっている。
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