2013 Fiscal Year Research-status Report
奈良時代知識TopicMaps辞書構築による正倉院文書研究方法論の記述の試み
Project/Area Number |
25730199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
後藤 真 花園大学, 文学部, 講師 (90507138)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報歴史学 / デジタル・アーカイブ / Topic Map / オントロジ / 奈良時代 |
Research Abstract |
正倉院文書トピックマップの原型を作成した。当該年度では、正倉院文書に関わる所属・帙・巻・断簡・紙などの基礎的な情報の部分をトピックとして入力し、それをリンクでたどることで、正倉院文書の構造を明らかにできるようにした。基礎情報の入力に関しては、大阪市立大学名誉教授・栄原永遠男氏の研究協力を得て実施した。 また、正倉院文書の復原形態としての「帳簿」に関する情報も入力を行った。これにより、正倉院文書の基礎的なリソースへのアクセスを可能とした。あわせて、断簡・紙に独自のURLを付すことによって、その基礎的なリソースへのポインタを作成するというモデルを可能とした。 次に、正倉院文書の中心である写経所文書を中心として、研究情報の入力を行った。具体的には、人名・経典名などの情報となる。経典名には、翻訳者や作者などの情報を付加すると同時に、経典が所属する宗派に関する情報の整理を行った。これにより、奈良時代の経典に関する知識や関連する情報の関係が、コンピュータ上で可視化され、研究支援を行うための仕組みとして利用可能な段階となった。 人名に関しては、特に経典との関係性を重視し、ある人物がどのような特定の経典に関わっていたかなどの情報を可視化することで、奈良時代における写経所周辺の仏教知識の解析への支援システムのきっかけを作成した。 また、経典に関しては、大正新脩大蔵経データベース(SAT)へのリンクも作成し、正倉院文書にあらわれる経典の原テキストへの参照も可能とした。仏教学研究などで正倉院文書を取り扱うためのひとつの取りかかりとして、有益であるかどうかの検証を今後も行う。 関連する各地での研究発表、および討論により正倉院文書トピックマップの原型の作成によって、奈良時代史をはじめとする各種人文科学研究へのこれらの技術応用の有用性について確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった、正倉院文書トピックマップの原型作成については、滞りなく行うことができた。ただし、紙情報に関しては、若干のエラーがあることが確認されており、これらのデータエラーを、今後、修正していくことが必要となる。また、正倉院文書の個別のトピック(経典名)から外部へのリンクを作成し、それが効果的に機能していることを確認できた。 人名情報や経典情報についても、最低限の情報の入力を行うことができ、それらが有機的に連関する状況を確認することができた。しかし、今後これらのデータの充実が重大な課題となる。また、関連する国内での研究発表も精力的に行うことができ、人文系・情報系いずれの研究者とも関連する議論を行い、フィードバックを得られている。引き続き、成果については随時公表を行い、最終年度に予定している国際会議への発表を目指して、準備を重ねていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作成したトピックマップをもとに、データの充実を目指す。栄原氏の協力を得つつ、正倉院文書の基礎情報をよりわかりやすい形で表現する工夫を行うとともに、共同研究者である内藤求氏とも協業し、今後の表示方法について検討を重ねる。 また、写経所に関連する研究知識情報を増やすことで、より高度な解析方法を検討する。 そして、ヴァンダービルト大学のブライアン・ロウ氏との打ち合わせを行い、2014年度に英語版のパイロットを作成し、2015年度には、日本語版・英語版ともに正倉院文書トピックマップの公開を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品(プリンタトナー等)を効率よく使用したことにより、当年度に新たに買う必要がなくなった。よって、次年度の支出にまわすように判断した。 次年度の早い段階で上記消耗品が切れることが予想されるため、同様の消耗品を次年度の早い段階で切れ次第購入予定。
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