2013 Fiscal Year Research-status Report
海洋酸性化によるサンゴの種間および種内での影響比較
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25740004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
栗原 晴子 琉球大学, 理学部, 助教 (40397568)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / サンゴ / 種内変異 / 石灰化関連遺伝子 / サンゴ礁 / 種間変異 |
Research Abstract |
本研究課題では、1。サンゴ種間における酸性化応答の比較および2。コユビミドリイシサンゴの種内応答、さらには種内応答のメカニズム解明を目的としている。この目的に即して、H25年度には、1。本島沿岸に生息する4種類のサンゴ(コユビミドリイシ、エダコモンサンゴ、ヤッコアミメサンゴ、ウスエダミドリイシ)を用いて酸性化応答の種間比較を実施した。その結果、種間によって酸性化応答は大きく異なり、コユビミドリイシのように酸性化の影響を全く受けない種が存在する一方で、エダコモンサンゴのように石灰化速度が60%近く減少する種も存在することが明らかとなった。 また研究目的2。コユビミドリイシの種内変異の比較を行うため、沖縄本島3カ所および石垣の群体を用いて実験を実施した。実験を行った結果、沖縄本島の3カ所から採集したサンゴ群体のうち1カ所は他の群体とは応答に違いが見られ、酸性化により石灰化速度が低下する個体群がみられた。一方で、石垣の群体は本島の2カ所の群体と同様に酸性化による影響は見られなかった。本結果により、同種のサンゴにおいても、酸性化応答に差がある可能性が示唆された。またさらに興味深いことに、同じ個体群でも、夏と冬で同様の実験を行った結果、夏には酸性化影響が見られなかった一方、冬では酸性化ストレスが観察され、同個体群でも、季節によって酸性化に対する応答が異なる可能性が示唆された。なお、奄美大島および屋久島からはサンゴの採集を行ったが、サンゴの輸送の際にストレスがかかってしまい、輸送中に死んでしまったため、実験には用いなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた通り、サンゴ種間およびサンゴ種内による酸性化応答の比較評価実験は概ね順調に予定通り実施した。サンゴ種間実験については、当初予定していたサンゴ7種のうち4種を用いて実施した。そのため、H26年には、さらにサンゴ種を増やすために、同様の酸性化応答実験を別のサンゴ種を用いて行う予定である。 一方、サンゴ種内の応答実験については、当初予定していた飼育実験に加えて、H26年度に実施を予定していた海水分析も一部完了することが出来、当初予定していた以上の進展が得られた。さらに当初は計画に無かったが、サンゴの飼育実験を夏に加えて冬にも行った結果、季節間で酸性化応答の違いがある可能性について示唆する結果が得られ、予測していなかった新たな研究成果が得られたと共に、今後の研究の新たな進展の可能性も出て来た。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、サンゴ種間の応答を解明するために、H25年に実施したサンゴに加え、さらに3種のサンゴを用いて酸性化応答を評価する。飼育実験に用いるハマサンゴおよびスギノキミドリイシ等の一部サンゴは既に採集済みである。昨年度の結果より、季節によって応答の違いがある可能性が示唆されたため、昨年の冬に引き続き、夏の最も水温および光条件が高い7~8月に飼育実験を実施予定である。 一方、H25年の実験結果より、酸性化応答に違いが見られたコユビミドリイシ2個体群を用いて、その応答差のメカニズムを解明するために、遺伝子発現量を比較する。既に飼育され、試薬に固定されたサンプルを用いて、RNA抽出し、石灰化関連遺伝子であるGalaxin やCAII,またpH調整遺伝子のCa-ATPase およびATP aseの発現量を解析し、群体間での違いについて探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度行ったサンゴの飼育実験の実施に見込んでいた物品類について、より安価な物品類の購入等により、見込み金額よりも使用金額を減らすことができた。また、本年度7種の飼育を予定していたが、4種の実験に留まったことも、物品の購入量および使用金額の減額に繋がった。一方で、海水のサンプル分析は、計画当初よりも多くの時間が要することが判明したため、物品費の一部を人件費へ回すと共に、次年度に必要と見込まれる更なる人件費の確保のために、来年度へ予算を繰り越せるように工夫をした。また当初3月に予定していたASLO国際学会への学会を、大学の学務のためキャンセルする必要が急遽生じたため、海外渡航旅費を次年度へと繰り越し、別学会(APCRS)での成果報告を予定している。 昨年度より繰り越した予算は主に飼育したサンゴの海水の分析のための人件費への利用を計画している。また本年度は、昨年度得られたサンプルを用いて分子生物学的実験の実施を予定のため、実験に必要な試薬類の購入、また新たに飼育予定のサンゴの採集の旅費および実験に必要な物品類の購入等当初予定していた研究費の使用計画に即した使用を予定している。
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Research Products
(12 results)