2014 Fiscal Year Research-status Report
海洋酸性化によるサンゴの種間および種内での影響比較
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25740004
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
栗原 晴子 琉球大学, 理学部, 助教 (40397568)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / サンゴ / 石灰化 / 二酸化炭素 / サンゴ礁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、1.サンゴ種間の酸性化応答比較、2.コユビミドリイシにおける種内応答の比較、および3.種内応答のメカニズム解明を目的としている。H25年にはサンゴ種間及び種内での応答差影響評価を実施した。その結果、サンゴ種間に加えて、コユビミドリイシ種内において、群集間によって、酸性化影響の受け方が異なることが明らかとなった。そこで本年度は、種内での酸性化応答の違いのメカニズムを解明するために、酸性化により石灰化速度が低下したコユビミドリイシ群集と,低下しなかった群集のそれぞれの石灰化関連遺伝子の発現量を比較した。その結果、海洋酸性化に耐性を示した群集では、石灰化形成部位のpH調整に関わる遺伝子である、Ca-ATPaseの活性が,耐性の低い群集に比較して有意に高いことが明らかとなった。本結果より、酸性化に対する応答の違いは、体内におけるpHの調整能の違いが大きく影響している可能性が始めて示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定をしていた、サンゴ種間、サンゴ種内の酸性化応答の比較、さらには応答の違いを規定している要因について、分子生物学的手法による解明に成功したことから、研究の目的の達成度は順調である。またさらに、当初計画には無かった、季節によるサンゴの酸性化応答の違いも明らかとなったことによって、当初以上に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果より季節によって同種のサンゴでも、酸性化に対する応答が変化することが明らかとなった。従って、今後は酸性化に対するサンゴの耐性能がそのサンゴが生息する環境にどれだけ既定されるかを解明するために、光条件、水温、栄養塩、有機物量や餌量などの生息環境がサンゴの酸性化耐性能に及ぼす影響について探る。 一方、サンゴ種間においても酸性化に対する耐性能が種によって大きく異なる可能性が示唆された。沖縄列島におけるサンゴ群集動態予測を目的に、特に沖縄列島サンゴ礁域で有占する種に着目し、酸性化に対する耐性の違いを定量的に評価する。
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Causes of Carryover |
本課題で予定していた、コユビミドリイシの地域間比較および、石灰化関連遺伝子に対する酸性化影響の評価実験については全て予定通り終了した。一方で、サンゴの種間における酸性化応答比較について予定していた6種のサンゴのうち、1種類のサンゴの採集が沖縄本島が行えなかったため、またもう1種は飼育中に白化したため、評価実験が実施できず、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、残り2種類のサンゴの採集および酸性化影響評価を実施するために未使用額を使用する。さらに4種のサンゴの影響評価より特に呼吸量に対する応答が異なる可能性が示唆されたため、当初予定には無かった呼吸量に対する酸性化影響機構の評価の実施のための酸素センサーの購入にも使用する。
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Research Products
(7 results)