2013 Fiscal Year Research-status Report
組織幹細胞の放射線応答動態から捉えた低線量放射線影響の発現機構の解明
Project/Area Number |
25740022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
大塚 健介 一般財団法人電力中央研究所, 原子力技術研究所, 主任研究員 (50371703)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線 / 放射線発がん / 組織幹細胞 / 腸管 / Lgr5 / 蛍光免疫染色 / 組織ホールマウント / DNA損傷 |
Research Abstract |
本研究は、放射線を受けた組織の中で、がんの標的となる組織幹細胞に着目し、放射線により傷ついた幹細胞が組織から排除されるか蓄積するかを明らかにするため、放射線応答動態の指標として様々な状態の幹細胞におけるDNA損傷修復動態や増殖活性を評価することを目的としている。放射線発がんのターゲットとして腸管に着目し、高感度in situ hybridizationと免疫組織化学染色を組み合わせ、組織におけるさまざまな腸管幹細胞を識別して、DNA損傷修復タンパクや増殖マーカーなどの発現分布と時間経過を明らかにするため、平成25年度は、腸管幹細胞マーカーとして知られるLgr5幹細胞の放射線照射後のDNA損傷修復動態を明らかにすることを計画した。 本研究では、組織における細胞個々のDNA損傷や動態を、幹細胞や前駆細胞などさまざまな細胞の種類を区別して蛍光で同時観察する場合に、少なくとも4種類の蛍光を同時に観察することが必要であった。そこで、平成25年度は、まず弊所で使用している3種類の蛍光を観察できる共焦点レーザー顕微鏡に対して、赤外レーザーユニットを追加実装し、同じ試料に対して4種類の蛍光を観察できる実験環境を整えた。また、組織レベルでの細胞動態を評価するためには、従来行われている組織切片の評価では立体的な組織構造を考慮した定量的な評価ができず、細胞の一断面のみの観察に限られるため、組織レベルの理解が難しい状況にあった。そこで、本研究では、腸管組織の、特に幹細胞を含むクリプト部分のホールマウント蛍光免疫染色法を確立した。これらの手技を用いて、平成26年度以降に放射線を受けた幹細胞におけるDNA損傷や細胞増殖・細胞死を含む細胞動態を評価し、がん化の初期過程である影響の蓄積性を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階では、評価する幹細胞をin situ hybridizationによって検討するところまでは至っていない。しかし、組織幹細胞を組織構造を維持したまま観察する手法を確立できたことにより、組織レベルのDNA損傷や細胞動態を追跡することが可能となり、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管組織に存在する、幹細胞とそれ以外の細胞におけるDNA損傷および細胞増殖・細胞死様態を明らかにするため、蛍光免疫染色で染色した立体固定標本を共焦点レーザー顕微鏡によって画像取得し、画像解析を進める。また、現時点ではLgr5陽性幹細胞のみの評価が可能であるが、in situ hybridizationや蛍光免疫染色によって、さまざまなマーカーの幹細胞について画像取得が可能であるか、定量的な評価が可能であるかを検討する。これにより、放射線照射後の幹細胞に対する障害の蓄積度を評価し、組織回復時の細胞動態について明らかにする予定。
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