2013 Fiscal Year Research-status Report
重金属と半金属を同時に不溶化可能な土質の物理的・化学的特性の解明
Project/Area Number |
25740036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
加藤 雅彦 岐阜大学, 工学部, 助教 (00578312)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 同時不溶化 / 重金属汚染 / 土壌汚染修復 / 拡散防止 / 土壌水分条件 / 有機物 / 不溶態定量 / 非破壊分析 |
Research Abstract |
銃弾には,鉛以外にもアンチモンも含まれるため,射撃場現場では半金属汚染への対策も求められている.不溶化は,溶解性の高い形態から不溶態へ重金属を形態変化させ,重金属類の拡散を防止する方法である.リン資材と酸化鉄資材によって,同時に鉛と半金属の不溶態が形成されることが知られている.ところが,鉛と半金属の不溶態形成量は,土中全量の一部に留まる.この不完全な不溶態形成の理由は,「土質の違い」と説明されてきたが,土質の“何”が,不溶態形成を制限しているか未知なままである.そこで,本研究では,不溶態形成に適した土質の物理的・化学的条件を解明し,鉛と半金属を同時に不溶化可能な技術の確立を目指す.平成25年度は,土壌水分条件を物理的要因として,有機物と酸化鉱物を化学的要因として,鉛-アンチモン不溶態形成量との関係解明を試みた.物理的要因の実験では,実汚染土に不溶化資材を添加し,水分飽和度を10%, 50%, 100%とした処理,湛水条件とした処理を設けた.所定期間静置後,XRDにて鉛不溶態を,XPSにてアンチモン不溶態を分析した.土壌中全鉛量に対する鉛不溶態形成量は,100%水分飽和土においても20%程度であったが,湛水処理により40%に高まった.このことから,土壌中で水分移動/循環が生じることで鉛不溶態が形成されやすいことが明らかとなった.化学的要因の実験では,有機物,鉄酸化物を特異的に除去した未汚染土に塩化鉛を添加した模擬汚染土を準備し,不溶化資材を加えた場合と加えない場合での不飽和状態での透水試験を行った.資材を添加しなかった土壌では,鉛移動量が高かった.しかし,この土壌に資材を添加することで,鉛移動量は,大きく減少した.またXRDによる鉛不溶態形成量の結果から,資材の添加によって減少した鉛は,鉛不溶態形成によって説明することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は,土壌水分条件と砂・粘土組成率を物理的要因として,鉛およびアンチモン不溶態形成量との関係を解明することであった.土壌水分条件については,土壌中で水分移動/循環が生じることで鉛不溶態が形成されやすいことを明らかにした.砂・粘土組成率については,実施することができなかった.しかし,当初平成26年度に計画していた化学的要因の解明を前倒しで実施し,不溶化資材に添加によって鉛移動量が減少したのは,鉛不溶態形成によることを不飽和条件での透水試験とXRDによる分析から明らかにできたので,おおむね順調に進展していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に実施することができなかった砂・粘土組成率と不溶態形成量との関係解明を試みる.また,アンチモン不溶態形成については,XPSによる分析を試み,エネルギーシフトを確認することができたが,アンチモン不溶態形成を明確にすることまではできなかった.引き続きアンチモン不溶態形成の解析を試みる予定である.平成25年度においてXAFS法を用いた非破壊の鉛・アンチモン形態分析を行ったが,現在解析を進めている段階である.さらにXAFS法による形態分析・解析を進め,多角的に不溶態形成に適した土質の物理的・化学的条件を解明を試みる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では計画よりも消耗品費が下回った.これは,一部,平成25年度に予定していた実験を実施できなかったためである. 平成26年度は,当初予定の金額(消耗品:30万円,旅費:40万円,その他:30万円)に加え,平成25年度に予定していた実験を進めるため,その分消耗品費を使用する予定である.
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