2013 Fiscal Year Research-status Report
サプライチェーンを通した戦略的化学物質リスク管理手法の構築
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25740045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上原 恵美 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10648132)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学物質リスク管理 / サプライチェーン / リスク評価 / ライフサイクルアセスメント / 中小企業 / 持続可能社会 / 塗装 / 揮発性有機化合物 |
Research Abstract |
本研究は、持続可能な産業活動の実現に向けて、製品サプライチェーンを通した戦略的な化学物質リスク管理手法の構築を目的とする。化学物質を製品の素材やプロセス薬品として使用する事業者が、プロセス・製品の設計段階において化学物質リスクを解析し、許容可能なレベルにまでリスクを低減させるためにプロセス・製品改善を能動的に計画する管理体制を支援する。具体的には、化学物質の大きな排出源であるにもかかわらず知識・リソースが乏しいために化学物質リスク管理体制が不十分な中小企業を支援するためのツールの設計・構築を行う。 平成25年度は、中小企業において稼動しているプロセスを対象としたリスク解析手法の整備と解析結果に基づくプロセス改善手法の検討を、具体的なケーススタディと共に行った。ケーススタディの対象は、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の大きな排出源であり、エネルギー消費や廃棄物の観点からも改善の余地の大きい工業塗装プロセスとした。工業塗装の業界団体の協力を得ながら、塗装工場の現地調査を行い、化学物質リスク解析に必要なデータ収集を行ったほか、塗料製造メーカー、塗装装置製造メーカー、塗装プロセスからの排気回収処理装置メーカーへのヒアリングを行い、塗装業における環境対策技術に関するヒアリング調査を行った。現地調査、ヒアリングから得られた情報・データを元に、低VOC塗料の利用や塗装装置の改善、オペレーションの改善、排気回収装置の導入等の環境対策の環境影響削減効果を、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法により評価した。VOCによる光化学オキシダント生成や温室効果ガスによる地球温暖化等の複数の環境影響を評価し、影響領域間のリスクトレードオフの解析を行った。なお、上記の調査や評価に際しては、学部生1名に研究協力を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、リスク解析手法の整備と解析結果に基づくプロセス設計手法の検討を具体的なケーススタディと共に行うことを計画していた。工業塗装という実際のプロセスを対象として具体的な検討を実施し、計画はおおむね順調に進展しているといえる。 重要な進捗として、工業塗装の業界団体からの協力を得る体制が整ったことが挙げられる。本件休の目的達成のためには、中小企業の製品製造の現場調査や関係者へのヒアリングによる情報・データ収集が必須であり、そのための体制が整ったことは重要な成果である。また、実在するいくつかの塗装プロセスのデータをもとに、化学物質リスクの定量的解析を行ったことも大きな成果である。プロセスの評価においては、環境影響だけでなく、環境対策技術の導入に伴う製品の品質やコストへの影響の分析も行っており、リスク削減対策の実現可能性の評価についても前進しつつある。平成26年度に予定している、製造現場におけるリスク解析支援ツールの設計・構築に必要な基礎的な検討のかなりの部分を達成できたといえる。 一方、当初研究実施計画に含めていた、作業者の健康影響の評価については、評価に必要なデータの入手が大変難しく、適用可能な評価手法の検討等は行ったものの、ケーススタディの実施には至っていない。この点に関しては、平成26年度以降継続的に検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度のリスク解析手法の検討結果をもとに、製品製造現場におけるリスク解析支援ツールの設計・構築を行う。平成25年度に続き、工業塗装プロセスをケーススタディの対象とする予定である。 平成25年度の成果により、プロセス評価に必要な情報やデータが明らかになってきた。リスク解析支援ツールの実装には、これらの情報・データの現場における収集可能性を検討し、収集が困難なデータについては、プロセスモデルやバックグラウンドデータを格納したデータベースの構築を行いデータ推算支援を行う必要がある。 平成26年度は、まず、プロセスデータ推算のためのモデル構築を行う。工業塗装における環境対策技術の導入効果の評価においては、対策の導入に伴うプロセスからのVOC排出量の変化を推算する必要がある。塗装のような開放系のプロセスについては、プロセス周辺の物質フローを表現したモデルがほとんど存在しておらず、現状では推算が困難な状況にある。そこで、実際のプロセスに近い条件下で行った実験データや、現場における対策導入実績などの情報から、塗装プロセスにおけるVOC排出量推算モデルを構築する。実験や対策導入実績の調査については、引き続き業界団体等の協力を得る予定である。 ツールの設計・実装に際しては、大学院生(1,2名)の協力を得る予定である。
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Research Products
(5 results)