2013 Fiscal Year Research-status Report
生態系サービス提供ユニットフレームワークによる自然再生の意思決定支援モデル構築
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25740047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 明良 東京大学, 地球観測データ統融合連携研究機構, 特任助教 (80633479)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生態系サービス / 生物多様性 / 最大エントロピーモデル / ベイズ法 / 相補性解析 / ミズゴケ |
Research Abstract |
平成25年度は、公開されているGISデータから、北海道の泥炭土壌の分布を標高データと気候(気温、降水量)から予測する最大エントロピーモデルを構築した。また、対象地域である黒松内町の比較的新しいミズゴケ湿地において7月と9月にミズゴケの成長量を測定し、既存の光合成生産モデルの構造を参考に、気象庁が公開する日照時間と現地の気温から光合成量を予測する統計モデルをベイズ法により構築した。 生態系サービスや生物多様性の指標となりえる土地利用の多様性について、全国レベルで集計した。また、10kmメッシュベースの農家人口の空間分布データを入手し、おおまかに相対的な農業生産サービスの空間分布を把握できる状態にした。さらに黒松内町の耕作放棄地の情報を入手した。 生物多様性の状態について、「黒松内生物多様性モニタリング」等から既存のデータを入手するとともに、環境省が公開している全国の野鳥の繁殖地の空間分布(20kmメッシュベース、二時期分)データも整理した。野鳥のデータに関しては相補性解析を行い、農業生産サービスのニーズに比しての生物多様性再生のニーズが高い場所を抽出した。また、黒松内町で比較的分布が限られている止水域・水田周辺の湿地環境の指標種であるイトトンボ類の現地調査を行い、定量的なデータを取得した。その一方、統計モデルによって潜在的な種プールと現地調査のデータの差異を説明する要因を抽出することで、各種人為影響の水域、湿地の生物多様性喪失への寄与を評価する評価手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、より確実に成果を得るため、生物多様性及び生態系サービスの評価を既存の広域データと現地調査から得られるデータの双方から行う戦略をとっている。公開されているGISデータ等、既存の広域データから得られた指標や評価手法の構築については一部の関連論文が年度内に公表されるなど、計画以上に前進が見られた。泥炭土壌の分布モデルについても、評価指標であるAUCの値が0.83と高い値を示している。しかし、現在のモデルは利用可能な説明変数を総当り的に解析にかけたものであり、説明変数の合理性、妥当性を十分に吟味するのが望ましい。 一方、現地のデータの整理、それを用いたモデルの構築・評価についてはやや遅れている。 ミズゴケの成長量モデルについては、モデルのパラメータの推定値の精度が高くなく、モデル構造の改善もしくはデータの追加の必要が示唆されている。現地で得られる耕作放棄地や農業生産の詳細なデータについては、まだ十分に整備できていない。また、イトトンボ類のデータについても、まだ解析の余地がある。また、研究代表者の異動があったため、既存の広域データと現地データの結果の比較・評価には十分に時間をさけなかった。 総合的に判断する限り、25年度に割り当てられた予算によって現地調査で取得すべきデータは最低限入手できており、広域データ等に関しては研究成果も出ていることから、計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の計画の進展は既存の広域データに基づくものが主だった。しかし、既存の広域データは解像度が低く、基になったデータの取得時期も古いため、それらのみに基づいて生態系サービス及び生物多様性について評価を行うのは十分ではないかもしれない。今後は現地調査や黒松内町から入手可能なデータに基づく、詳細なデータに基づく解析・評価を進展させていくのが望ましいだろう。幸いなことに最低限のデータに関しては25年度までに入手できているので、これらを整備、解析し、広域データによる結果と比較していくことを進めることになるだろう。また、現地調査によるデータを追加することで、一層精度の高いモデルを構築することが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は必要最低限のデータを予算以内で取得できたため、不要不急の支出を抑えたところ2570円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額として残った金額は数千円台であるため、請求時の次年度研究計画(25年度に得られたデータを基に生態系サービス及び生物多様性の評価モデルを改善する。さらに、データの追加を行ってモデルを改善する。)の遂行に加えて、データを確実に保存するための記録媒体購入等の物品費使用によって、より研究の遂行上のリスクを低下させることをめざす。
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Research Products
(18 results)