2013 Fiscal Year Research-status Report
環境評価手法を統合した応用一般均衡モデルの開発:環境変化の経済的影響評価に向けて
Project/Area Number |
25740065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70507699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気候変動 / 空間的応用一般均衡モデル / 積分可能性問題 / 地域間産業連関表 / 自然環境の変化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、気候変動による自然環境の喪失や生物多様性の保全政策に関する経済評価への応用に向けて、自然環境の経済的価値を計測するための評価モデルを組み込んだ空間的応用一般均衡モデルの開発を行うものである。本年度においては、自然環境の経済的価値計測手法を統合した応用一般均衡(CGE)モデルの構築およびアンケート調査設計を行うことを目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。 第一に、自然環境変化が経済活動に及ぼす影響を評価するための効用関数を定式化した。環境の利用価値をCGEモデルにおいて考慮するために、環境に関する全国規模のレクリエーション需要関数の推定式から積分可能性問題(Integrability Problem)を解くことにより、合成消費財、レクリエーション・サイトへの訪問回数、およびレクリエーション・サイトの環境を独立変数とした効用関数を誘導した。さらに、環境の非利用価値に関して、CVMによる計測値に所得の限界効用を乗じた項を前述した効用関数に加えることにより消費者行動理論と整合的な効用関数を誘導した。 第二に、経済データの整備、およびCGEモデルにおけるパラメータ推定を行った。本研究は基準年の均衡状態を再現するために平成12年度(2000年)47都道府県地域間産業連関表を基本として、47都道府県20産業部門の地域間産業連関表を作成した。一方、パラメータ推定はキャリブレーション法を用いるが、推定できないパラメータについては、GTAPなどの既存研究の結果を用いた。 第三に、アンケート調査票の質問項目を検討した。本研究は全国の成人男女を対象としたインターネット調査を予定しており、必要サンプル数を1,000件から1,500件程度と想定している。また、アンケート本調査前に作成した調査票を用いてプレテストを次年度の早い段階にて行うことにより調査票の有効性を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究におけるこれまでの達成度は「(2)おおむね順調に進展している」と評価することができる。今年度の研究目的は大きく3つに分類することができるが、3つのほぼすべての段階において、研究目標は達成することができたと考えられる。第1段階においては、自然環境変化が経済活動に及ぼす影響を捉えるために、自然環境の経済的価値を評価するためのモデルを組み込んだ効用関数の導出を行った。第2段階においては、自然環境変化が経済活動に及ぼす影響を定量的に評価するための基本モデルを構築し、さらにそのためのデータベースの構築及びパラメータ推定を行った。第3段階においては、自然環境の経済的価値を計測するためのアンケート調査の質問項目を検討した。ここでは、質問項目を設定するものの、プレアンケート調査までは実施できなかったため、質問項目の精査及び次年度の早い段階での実施・再検討が必要とされる。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は次年度において、環境の経済的価値の実証分析、モデルの挙動確認及びシミュレーション分析による経済評価を行うことを予定している。特に、インターネットによるアンケート本調査を実施し、その調査結果を用いて実証分析を行うことにより、自然環境の利用価値及び非利用価値を計測することを予定しているため、アンケート調査のための質問項目の精査及び再検討が必要と考えられる。そのために、環境価値評価のためのアンケート調査を行っている専門家から、本研究で作成したアンケート調査質問項目に関する助言や意見をもとに、それらを反映させることでアンケート本調査へと進めていく予定である。
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