2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境評価手法を統合した応用一般均衡モデルの開発:環境変化の経済的影響評価に向けて
Project/Area Number |
25740065
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70507699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気候変動 / 砂浜・干潟 / 適応策 / 応用一般均衡モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、気候変動による自然環境の喪失や生物多様性の保全政策に関する経済評価への応用に向けて、自然環境の経済的価値を計測するための評価モデルを組み込んだ応用一般均衡モデルの開発を行うものである。本年度においては、気候変動による海面上昇がわが国の砂浜・干潟を侵食するシナリオに関して、応用一般均衡モデルを用いた数値実験を行うこと、および本研究のまとめを行うことを目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。 第一に、海面上昇による砂浜・干潟の侵食シナリオ、および気候変動適応策として砂浜・干潟の侵食に対する養浜事業シナリオを作成した。前者はUdo et al. (2013)に基づき2031-2050年および2080-2100年の2時点において、4つの代表的濃度経路シナリオ(RCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5)による砂浜侵食率を用いた。一方、後者はわが国における代表的な7つの養浜事業の単位面積当たり平均費用(18,276円/m2)を用いた。 第二に、気候変動に伴う海面上昇による砂浜・干潟の侵食の経済的被害は、わが国全体として、2031-2050年の期間において69億円/年から86億円/年、2081-2100年の期間において、299億円/年から483億円/年と推定された。特に、気候変動が進むと、北海道と東北地域を除くほとんどの地域で砂浜・干潟の侵食による経済的被害は大きくなることが示された。 第三に、気候変動適応策として砂浜・干潟の侵食に対する養浜事業が効果的であった都道府県は、2031-2050年の期間において神奈川県のみ(RCP8.5)であるのに対して、2081-2100年の期間において、8府県(RCP8.5)と推定された。特に、近畿地方や瀬戸内海沿岸のいくつかの府県において、本研究の仮想的な適応策が効果的であることが示された。
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Research Products
(10 results)