2013 Fiscal Year Research-status Report
平編布における視覚的表面粗さ感の計測と設計に関する研究
Project/Area Number |
25750016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若子 倫菜 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30505748)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面粗さ感 / 編布 / 視覚 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,平編布の視覚的表面粗さ感を計測,評価する方法の確立と,表面粗さ感と物理的設計値とを対応づけるデータベースの構築である.H25年度は,表面粗さ感と原糸や編目の構造との関係に関する基礎的知見を得ることを目的とした. 課題の1つ目は表面粗さ感の計測に必要な評価用語を収集し選定することである.20~30歳代日本人女性46名に代表的な平編布5種類を観察してもらい,表面粗さ感に関する用語86語を収集した.収集用語についての視感評価を行い,多変量解析により表面粗さ感評価において主要な感性用語10語を選定した. 2つ目は視知覚に関係する物理的特性値の計測に必要な画像明度と輝度との校正式を実験により求めることである.グレースケールチャートの画像撮影と輝度測定により11種類の平均画像明度と平均輝度を求め,対応関係から校正式を得た. 3つ目は官能評価における評価者と試料編布との観察距離の影響を調査し,適切な観察距離を設定することである.観察距離を0.6m,1.5m,1.8m,2.2m,2.5mとして20~30歳代日本人女性24名に選定した感性用語についての視感評価をしてもらった.その結果,表面粗さ感評価では観察距離1.5m~1.8mが望ましいことがわかった. 4つ目は代表的な平編布5種類を用いて原糸・編目構造と表面粗さ感との関係を調査し,物理的設計値をパラメータにもつ表面粗さ感との関係式を求めることである.20~30歳代日本人女性24名に選定した感性用語について観察距離1.8mで視感評価をしてもらった.また,校正式を用いて各試料の輝度分布を解析し物理的特性値を求めた.両者の相関関係を調べた結果,表面粗さ感は見かけ糸太さと編目1つが占める面積との積を用いて単純な関係式で表されることがわかった.この関係式により,平編布における視覚的表面粗さ感の評価と設計の可能性が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度における検討課題の1つ目は,表面粗さ感の計測(官能評価)に必要な評価用語を収集し選定することであった.平編布の視覚的な表面粗さ感に関連する多数の感性用語を収集し,視感評価実験と多変量解析を行って表面粗さ感の評価に適切な10語の感性用語を選定することができた. 2つ目は,視知覚に関係する物理的特性値(輝度分布特性)の計測に必要な画像明度と輝度との校正式を実験により求めることであった.11段階のグレースケールについての各平均画像明度と各平均輝度とを測定し,両者の関係式(校正式)を得ることができた. 3つ目は,表面粗さ感の視感評価における評価者と試料編布との間の観察距離の影響を調査し,適切な観察距離を設定することであった.近距離も遠距離も含む5種類の観察距離での視感評価実験から,選定した10語の表面粗さ感についての評価では,観察距離は1.5m~1.8mが評価しやすいことを調査できた. そして4つ目は,代表的な平編布5種類を用いて原糸・編目構造と表面粗さ感との関係を調査し,物理的設計値をパラメータにもつ表面粗さ感との関係式を求めることであった.試料編布についての視感評価と輝度分布特性の解析とから,見かけ糸太さと編目1つが占める面積との積をパラメータとする表面粗さ感との関係式を得ることができた. H25年度の実施状況は研究計画に沿って課題を解決できていることから,「おおむね順調に進展している」ものと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度における検討課題の1つ目は,原糸・編目構造がさらに微小に異なる平編布を試料として,物理的設計値(輝度分布特性)と表面粗さ感との関係式の精度を向上させることである.編目の構造がさまざまに異なる平編布,すなわち編目1つ分の寸法と面積がさまざまに異なる平編布や,見かけ糸太さの異なる2種類の編目が混在する平編布を試料として,視感評価と輝度分布特性の解析を行い,H25年度の4つ目の課題で得た物理的設計値と表面粗さ感との関係式との整合性を調査する.整合性が低い場合には,見かけ糸太さと編目1つが占める面積との積にその他のパラメータを加えたり,従来の関係式における定数を修正したりすることによって相関の高い関係式を求める. 2つ目は,平編布に色彩が加わることが輝度分布特性に及ぼす影響と表面粗さ感に及ぼす影響を調査し,H25年度の4つ目の課題とH26年度の1つ目の課題で得た関係式に色彩のパラメータを加えることである.編目の構造や見かけの糸太さは同一で色彩だけが異なる平編布を試料として,視感評価と輝度分布特性の解析を行う.原糸に色彩が加わると糸領域の色彩と背景領域の色彩とが同化するために,本来の糸領域と背景領域との境界は区別しにくくなる.この変化は試料の輝度分布特性にも影響をおよぼすことから,糸領域から背景領域にかけた輝度の変動を分析して新たな糸領域と背景領域との境界を調査する.この錯視的な糸領域について見かけ糸太さや編目1つが占める面積などの輝度分布特性を解析し,表面粗さ感との関係式を求める.この手法で高い相関が得られない場合は,輝度分布特性の解析対象を編目の構造や糸といった微細なものから編布全面に切り替え,輝度分布の形状などを検討することによって解決を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料編布や擬似脚部を作製するための物品費については,靴下類製造メーカーや技術支援センターの作製工程や材料などでの工夫により低コストで作製,提供してくださったために,当初の計画よりも少ない使用となった. 官能評価実験での評価者への謝金については,ほとんどの評価者の方々が自主的に無償にて協力してくださったために,当初の計画よりも少ない使用となった. 本研究課題専用の色彩計は当初の計画通り購入予定である. 官能評価実験でのデータ数(評価者数)は依然として十分とはいえない状況であることから,学内だけではなく学外でも評価実験を行い,データ数を増加することを計画している.そのための旅費と謝金に使用する計画である.また,成果報告として国際会議での研究発表を予定しており,そのための旅費等に使用する計画である.
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