2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25750022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
露久保 美夏 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 講師 (50646924)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 麦飯 / β―アミラーゼ / 免疫染色法 |
Research Abstract |
米との混炊に用いる大麦試料を決定するため,種々の大麦品種および搗精度の異なる大麦を用いて麦飯を調製し,官能評価を行った。これにより,官能的に受け入れられると評価されたモッチリボシの75%搗精品を日本晴に50%混炊して麦飯の調製を行う事と決定した。また,このモッチリボシは成分組成や炊飯特性について明らかにされていない部分があるため,試料の基本情報となるこれらについての分析を行い試料特性を把握した。米と大麦はそれぞれ炊飯に適した加水率が異なり,これが混炊時のできあがりの食感に影響を与える。先行研究で示されていた加水率(大麦重量に対して2.2倍量)が官能評価により好ましくない事が明らかになったため,新たに本研究で使用する試料に対する最適な加水率を決定し(大麦重量に対して1.8倍量),続く混炊条件に用いる事とした。 米と大麦の混炊時に起こる酵素の挙動を捉えるため,大麦β―アミラーゼから作成したβ―アミラーゼ抗体を混炊中に取り出した日本晴に反応させて,酵素が大麦内から溶出し米粒へと移動しているかどうかを免疫染色法により検討することとした。そのため観察に用いる米粒切片の作製条件の検討を詳細に行った。試料米および試料大麦を浸漬した後に加熱を開始し,所定の温度に達した時点で取り出して粒と液体を分離させ,粒を包埋した凍結ブロックを作成し,凍結ミクロトームにより薄切した。これまで米粒からの切片作製は米粒の組織が強固であるなどの理由から困難とされてきたが,本研究により試料の固定条件や切削時の条件を詳細に検討した結果,免疫染色に使用可能な米粒切片の作製方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大麦試料の決定に際し,当初予定していた品種に加えて新たに種々の品種や搗精度のものから最適な試料を選択することとし,複数回の官能評価を行った。決定した試料(モッチリボシ,75%搗精)については試料特性に関する基礎的なデータが蓄積されていなかったため,一般成分測定や炊飯特性の分析等を行う実験を追加した。研究を遂行する上で必要不可欠な実験であり,これにより基礎的かつ重要なデータが蓄積された。 酵素の挙動を視覚的に捉えるための免疫染色法による解析については,これまで作製が困難とされていた米粒からの切片作製の条件設定を確立するために種々の実験を行った。試料のPFA固定時の温度や時間,固定液の組成,凍結ブロック作製に用いる包埋剤の種類,切削時の温度等,各段階での検討を重ね,最適な条件を見いだした。この切片作製条件を決定することは当初の計画以上に困難かつ慎重な検討が必要であり多くの時間を要したものの,これまでに行われていなかった研究手法の確立という点において,また,今後の本研究の達成度を高めるために有益な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
炊飯中の大麦β―アミラーゼの溶出挙動を解析するため,浸漬後や炊飯中の所定の温度に達した時点で炊飯液から粗酵素液を調製し,ウエスタンブロッティングにより大麦β―アミラーゼの検出を行い,β―アミラーゼの溶出の有無や温度に伴う溶出挙動の変化を明らかにする。 これまでの研究で確立した切片作製法および大麦β-アミラーゼ抗体を用いて,大麦と米を混炊した際に大麦β-アミラーゼが炊飯液中に溶出し,米のデンプンに作用しているかどうかを免疫染色法により検討する。これにより,麦飯調理の際,米粒切片のどこに大麦β―アミラーゼが存在しているかをデンプン粒レベルで詳細に明らかにする。また,炊飯中の糖量増加を把握するため,加熱中の所定の温度に達した時点での粒および炊飯液中の糖量測定をHPLCにより行う。 以上により,麦飯の調理時に大麦β―アミラーゼが米デンプンにどのように作用してデンプンを分解し糖量増加が起きているのかを定量的分析と視覚的分析から解明し,混炊による糖生成機構を明らかにする。研究成果は学術誌や学会にて発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行するにあたり,当初計画していた実験の前に検討が必要な実験を行う必要が生じたため,優先して行う事にした。そのため,当初予定していた試薬や器具類の消耗が計画より少なかったことが理由として挙げられる。 免疫染色法の実施に必要な実験器具,試薬等の購入および糖量測定に必要な試薬やカラム等の購入を行う。また,研究協力者との打合せに交通費を要する。その他,研究成果の学術誌掲載,学会発表の際の費用として使用する。
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Research Products
(1 results)