2013 Fiscal Year Research-status Report
ワイン醸造における新規エステル生成経路の解明とその応用:フレーバー向上技術の開発
Project/Area Number |
25750024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
斉藤 史恵 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00625254)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フレーバー / ペクチナーゼ製剤 |
Research Abstract |
ワインに含まれるエステル化合物は,ワインのフレーバー(味と香り)の構成要素として重要な役割を果たしている。本研究は,ワイン醸造で用いられるペクチナーゼ製剤に見出されたエステル生成反応を解明し,本反応を利用した新たな醸造技術の開発を目的とする。平成25年度は,下記に示した3つの項目を行った。 1.ペクチナーゼ製剤のフェノール酸エチルエステル(PEE)生成活性の測定:本実験でPEE生成活性の高い市販ペクチナーゼが2つ見いだされた。PEEは,フェノール酸酒石酸エステルの分解反応とフェノール酸のエステル化反応を経て生成する。市販ペクチナーゼ製剤には複数の酵素が混在しており,2つの反応がどの酵素によるものか不明である。そこで,酵素製剤を分離・精製し,各反応を行う酵素の同定を行っている。 2.ワイン中における官能評価手法の確立:甲州種ワインの酸,苦,渋味について,一定時間後の味強度を採点法とQDA法を用いて測定した。その結果,被験者間の誤差が大きく,また採点法とQDA法で値に相関性が認められなかった。この要因として,口中における味の変化に個人差があり,最も味を強く感じる時間が異なるためだと推測された。そこで,味の変化を経時的に測定するTI法を用いることが望ましいと考え,測定システムの開発に着手した。 3.ワイン醸造試験の条件検討:PEE生成能が認められたペクチナーゼ製剤を用い,甲州種ワインの醸造試験を行った。モデル溶液中ではコーヒー酸およびp-クマル酸からPEEが生成したが,醸造条件ではp-クマル酸は消失し,PEEの生成も認められなかった。そこで,GC分析したところp-クマル酸が脱炭酸して生成する揮発性ビニルフェノール(POF)が検出された。酵母には脱炭酸酵素を有するPOF+株があり,本実験で用いた酵母もPOF+株であった。この結果から,醸造試験ではPOF-株を用いることが望ましいと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,1.ペクチナーゼ製剤のフェノール酸エチルエステル(PEE)生成活性の測定,2.エステル化反応を生じる基質と反応生成物同定,3.ワイン中における官能評価法の確立を実施する予定であった。1と3については,現在,計画通り遂行されている。2については,フェノール酸以外にエステル化反応を生じる基質を検討するため,本年度(26 年度)実施予定であったワイン醸造試験の条件検討を先行して行った。本実験では,香りに関わる揮発性エステル化合物に着目し,ペクチナーゼ製剤の添加によるエステル化合物の変化について解析を行っている。解析結果より,影響のみられるエステル化合物を抽出し,ペクチナーゼ製剤との基質特異性についてさらに詳細な検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進にあたり,課題として(1)エステル化反応を触媒する酵素の同定,と(2)TI法による官能評価手法の確立がある。(1)については,現在,吸着カラムクロマトグラフィーによる酵素製剤の分離・精製を行っている。また,過去の報告よりシンナモイルエステラーゼおよびペクチンメチルエステラーゼが本反応に関与していると推測し,その同定を試みている。(2)については,TI法を行うためのソフトウェアが必要であるが,非常に高価であるため購入は困難である。そこで,パソコンのマウスの動きを経時的に記録するソフトウェアを開発し,官能試験への適用を検証している。
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