2013 Fiscal Year Research-status Report
金属元素を指標とした栄養機能成分の基原判別法の開発と評価
Project/Area Number |
25750033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Health and Nutrition |
Principal Investigator |
松本 輝樹 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 食品保健機能研究部, 室長 (70455418)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ICP-MS / 第2属元素 / 基原判別 / 食品添加物 |
Research Abstract |
食品表示における不確かさを解消することは、食品の安全性を確保するために重要である。本研究では炭酸カルシウム (CaCO3) を対象に、夾雑物として存在する第2族の元素組成とこれらの安定同位体を ICP-MS (誘導結合プラズマ質量分析装置) にて定量化することにより、その基原の判別および当該成分を含んだ食品中からの基原を判別化する方法を確立することを目的とする。 本年度は、以下の 3 項目に関して検討を行った。 1. CaCO3の選定:市場流通品に関し調査した結果、合成品3種、既存添加物6種、石灰石3種、その他3種の計15種を入手した。ただし、そのうち1種は、ドロマイトである。 2. 測定対象元素およびその安定同位体の定量下限値 (LOQ) の推定:第2属元素を測定対象とした ICP-MS による定量化では、Mg (24)、Ca (44)、Sr (88)、Ba (137) をそれぞれ選択し、内標準として In (115)、コリジョンガスとして He を用いて測定を行った結果、LOQ (ppb) は、Mg (45)、Ca (44)、Sr (1.9)、Ba (4.5) と推定された。その他安定同位体の LOQ については、現在検討中である。 3. 元素組成による基原判別:半定量分析による試料に含まれる 73 元素の存在確認を行った結果、約 50 種類の元素の存在が示唆された。現段階では存在する元素組成に基づいた判別化はできていないが、第2属元素を指標とした定量分別化では、Mg と Sr を選択することにより、海産物のみ特異的に分別化できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現段階では、第2族元素の定量に必要な検量線の作成が終了しておらず、各検体に含まれる元素の定量値については評価できていない。また、安定同位体の測定に関しては、実績概要に記した元素以外、検討できていない。 計画の遅延については、昨年度9月より半年間、業務課題の受託事業を締結したことにより、本事業の進行が遅れているが、測定に必要な試薬等の収集は完了しており、今後速やかに検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 前年度未検討課題の検討:試料に含まれる各成分 (Mg, Sr, Ba) の定量化に向けた条件検討を行い、数値化を行う。 2. 安定同位体比による基原判別:今回測定対象とする第2族元素のうち、安定同位体は、Mg (3 種)、Ca (4 種)、Sr (4 種) 及び Ba (7 種) に複数存在することから、それぞれの同位体について ICP-MS 測定を行う。測定した同位体比は、元素単独または複数を組み合わせることにより、さらに詳細な基原の判別が可能であるか検討を行う。同位体測定は、同位体数の少ないものから順次測定を行い、少ない変数での分別が可能であるか検討を行う。Sr 及び Mg については、安定同位体比に対する認証標準物質 (NIST SRM 987 及び 980) も存在することから、安定同位体の存在量についても精確に評価する。 ○加工食品中のCaCO3由来第2族元素及び安定同位体測定に関する検討 CaCO3は、主に栄養強化の目的で使用されることが多い事から、成分表示にCaCO3の記載がある食品を購入する。ただし、食品の選定にあたっては、原材料表示に基原が記載されているものや、他の競合成分の添加がないものを優先的に選択する。測定試料の前処理は、測定対象元素の沸点が高いことから乾式灰化 (550 ℃, 6 hr) により、夾雑物を分解した後希酸に溶解させ、不純物をろ過し、試験溶液とする。なお、前処理法については、予め認証標準物質を用いた信頼性確認試験を行い、過不足なく測定対象成分が抽出できていることを確認する。第2族元素および安定同位体の測定は、これまでに構築した方法を用いて測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度、業務課題の追加検討により、本検討が十分に実施できておらず、残額を生じる結果となっている。 残額分は、ICP-MS を使用することにより消費されるアルゴンガス量に換算した際 300 時間分に相当するが、前年度の未検討課題である定量化における条件検討 (LOQ の推定) において、消費されると考えられる。また、分別化の精度を向上させるため、評価試料については引き続き調査を行い、追加購入する予定である。
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