2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな指標の導入を目指した革新的な抗肥満活性評価システムの構築
Project/Area Number |
25750048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
海野 雄加 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30433212)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / 肥満 / 表現型スクリーニング / 分子細胞生物学 / 阻害剤 / プロテアソーム / 評価システム / 創薬 |
Research Abstract |
肥満は国民の健康と国家財政において深刻な問題だが、エネルギー収支を基準とした個人の生活習慣の改善に委ねられている。この個人の努力を機能性食品は促進するが、抗肥満活性の統一的基準は十分に確立されていない。そこで本研究では、細胞イメージング技術により抗肥満活性評価・解析システムを構築し、個体レベルでの肥満解消を予測可能なシステムへと磨き上げることを目指す。 培養前駆脂肪細胞は、薬物刺激により細胞中に油滴を蓄え始め脂肪細胞へと分化する。このため、抗肥満活性の評価には、培養脂肪細胞を用いた脂肪蓄積量の解析が用いられる。本研究では、脂肪蓄積量だけでなく、分化に伴って形態学的変化や量的変化を起こす生体分子を探索し、新たな評価システムを確立する。また、評価システムは、新規抗肥満活性阻害剤と既存の抗肥満成分を用いて有効性を検証する。 本年度は、1)脂肪蓄積量の解析に置き換わることが可能な生体因子の探索、2)新規抗肥満活性阻害剤の探索、を行った。1)に関しては、核の形態や8-ニトログアノシン量が分化に伴い劇的な変化を起こし、さらに、薬物刺激後に脂肪滴が蓄積される以前に観察されることを明らかにした。2)に関しては、これまでの共同研究から、新規抗がん剤の創製を目指したプロテアソーム阻害剤の合成展開に携わり、プロテアソーム阻害剤の中から抗肥満活性を有する新規化合物OB-Iを見出した。抗がん剤の標的因子であるプロテアソームは脂肪細胞の分化誘導にも重要な役割を示す。化合物OB-Iは、試験管内の酵素アッセイの阻害濃度と細胞内での阻害濃度に解離が見られる問題があったが、この問題を解決する化合物Bの取得に成功した。この化合物Bは、既存のプロテアソーム阻害剤よりも高い選択性を有することがわかった。平成26年度では、システムの有効性を、新規抗肥満活性阻害剤と既存の抗肥満成分を用いて検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、細胞イメージング技術により抗肥満活性評価・解析システムを構築することを目指している。 25年度の研究実施計画は以下の2点であった。 1)細胞イメージング技術を用いて分化の程度を数値化できるようにする。 2)新規抗肥満活性阻害剤を探索する。 この実施計画はおおむね順調に進展している。1)に関しては、分化の程度は一般的に、脂肪細胞中の脂肪蓄積量で判断される。そこで、脂肪蓄積量に置き換えることが可能な生体因子の探索を、マウス3T3-L1株化脂肪細胞を用いた蛍光顕微鏡解析から行った。分化誘導試薬刺激後、細胞内の脂肪滴の蓄積と共に、核の形態や8-ニトログアノシン量が変化した。これら生体分子の変化は、抗肥満活性評価・解析システムに利用できると考えたが、数値化できるまでにはブラッシュアップされていない。2)に関しては、評価システムの有効性を調べるための新たな抗肥満活性阻害剤を探索した。既に、プロテアソーム阻害剤の中から、抗肥満活性を示す化合物OB-Iの取得に成功している。この化合物OB-Iは、試験管内での精製酵素への阻害活性と、培養細胞の細胞内での阻害活性とを比較すると、約100倍の解離が見られるという問題があった。そこで、本年度は共同研究から、プロテアソーム阻害に着目した構造活性相関研究を行い、この問題を解決する化合物Bの取得に成功した。さらに、化合物Bが既存のプロテアソーム阻害剤よりも高い選択性を有することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は今年度からの実験を継続するとともに、当初計画に沿って以下の実験を進める。 1)細胞イメージング技術を用いて分化の程度を数値化できるようにする。 2)新規抗肥満活性阻害剤を探索する。 3)化合物OB-Iと化合物Bを用いて阻害作用機序解析を進めることで、評価システムから解析システムへと改良・バージョンアップさせる。 現行の3T3-L1細胞の分化・脂肪蓄積プロトコールを用いて得られる脂肪蓄積細胞において、細胞あたりの脂肪滴の総面積、核の形態、8-ニトログアノシンの発現量と局在、の3方面から分化程度を規格化する。特に、分化決定・分化進展・脂肪蓄積・終末分化の各ステージでの特徴を明らかにしたうえで、その状態を細胞イメージング技術により数値化出来る様にする。そのうえで、化合物Bがどのステージに作用するのかを明らかにし、そのステージ内での作用機序を解析する。抗肥満活性を有する既存の阻害剤として、ワートマニンやゲニステインなどが良く知られている。そこで、構築した抗肥満活性評価システムは、化合物OB-Iや化合物Bと共に既存の抗肥満活性物質により、システムの有効性を検証する。その他、脂肪細胞の分化に関係すると期待される食品成分や化合物群にて解析しながら、新規抗肥満活性阻害剤の探索を引き続き行う。 新規化合物の探索と、それら新規化合物を用いた評価を順次行うことで、評価システムを解析システムへとバージョンアップさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗具合に応じて研究費を使用したため当初の見込み額と使用額は多少異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Potent proteasome inhibitors derived from the unnatural cis-cyclopropane isomer of Belactosin A: synthesis, biological activity, and mode of action.2013
Author(s)
Kawamura S, Unno Y, List A, Mizuno A, Tanaka M, Sasaki T, Arisawa M, Asai A, Groll M, Shuto S.
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Journal Title
Journal of Medicinal Chemistry
Volume: 56 (9)
Pages: 3689-3700
DOI
Peer Reviewed
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