2013 Fiscal Year Research-status Report
ロコモティブシンドロームにおけるビタミンD栄養状態の意義
Project/Area Number |
25750061
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
桑原 晶子 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 講師 (00582602)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | サルコペニア / 核磁気共鳴装置 |
Research Abstract |
当初の予定では、変形性関節症やサルコペニア等のロコモティブシンドローム有病者100 例程度を対象に、血中ビタミンD (25OHD)濃度の評価によるビタミンD栄養状態と各疾患との関係を横断的に調査することを計画していた。しかし、サルコペニアを正確に診断する方法が未だ確立されておらず、まずはその診断法ならびに新規指標について考慮する必要が生じた。現在、多くの研究ではニ重エネルギーX線吸収(DXA)が用いられているが、DXA法では全身の筋肉量しか測定できず、同じ筋肉であっても、特に加齢の影響を受けるのがどの部位であるのかについては特定できない。しかし、核磁気共鳴装置(MRI)による測定では、放射線被曝もなく筋肉の部位ごとの変化を観察できるという利点がある。そこで今年度は、MRIを用いた加齢性筋肉量減少の新規評価指標の基礎的検討を行うこととした。 対象者は腰背痛で来院の65歳以上の高齢患者60名(M/F: 31/29)、65歳未満の成人患者46名(M/F: 24/22)とした。MRIにて、立位を保つ主動筋の一つである「傍脊柱筋 (PVM) 」および股関節屈筋で歩行に重要な「腸腰筋」の断面積を測定した。 その結果、女性より男性、高齢者より成人でPVMおよび腸腰筋は多く、体重で補正してもその関係は保たれた。また、男女共に年齢とPVM、腸腰筋は体重補正した場合でも有意な負の相関を示した。体重で補正したPVM、腸腰筋を成人・高齢別に男女で比較すると、成人・高齢共に歩行筋である腸腰筋は女性で有意に低値を示し、立位保持に使うPVMは男女で有意差が見られなかった。 これらの結果より、MRIにて測定したPVMおよび腸腰筋は、加齢性の筋肉量減少を検討する上で、一定の有用性があることが考えられた。さらに、筋肉の部位、あるいは性別により筋減少の程度が異なることも推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも示した通り、サルコペニアにおける加齢性筋肉量減少のゴールドスタンダードとなる評価法が現状では確立されていない。一般に普及しているDXA法による筋肉量のみの測定では、筋肉の質(骨格筋領域内の脂肪浸潤量など)の評価はできないため、加齢性筋肉量減少の詳細な特徴を把握できない。そのためMRIによるより正確な筋肉量測定が必要であると考えられた。しかし、MRIによる全身の筋肉量の測定は、実際の臨床現場で実施するのは時間的・経済的にも非現実的である。そこで、ある特定の部位のみの測定で加齢性筋肉量減少を評価できないかを検討し、この方法が一定の有用性を持つことが分かった。以上のような状況は、研究開始1年目としては、ほぼ想定された研究の進展状況であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の調査ではMRIによる筋肉測定データに限定されており、一般的に用いられているDXA法による全身筋肉量との相関性が得られていなかった。また、外来患者であったため、血液データを含む背景データが不足していた。 そこで、今年度は研究協力施設にて健康成人30名程度をボランティアとして募り、対象者のDXA法による四肢筋肉量の測定、ならびにMRIによる特定部位の筋肉量測定を行う。なお、MRIによる撮影において筋肉量減少を捉えるのに適した特定部位の探索も行うものとする。DXA、MRI測定当日に採血を実施し、一般生化学検査および血中のビタミンD関連指標の測定、身体計測を行う。併せて簡易食事歴法による食事摂取調査を実施する。まず、MRIの特定部位の筋肉量とDXAの四肢筋肉量との相関関係を調査し、MRIを用いた新規測定法の筋肉量評価に対する有用性を検討する。また、筋肉量減少を把握するのに適した部位の特定も行う。次に、血中ビタミンD濃度と筋肉量との関係についても考察し、その他の血中指標ならびに食事調査データと筋肉量との関係についても検討をする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」にも示した通り、今年度は加齢性筋肉量減少の基礎的検討に力を注いだ。そのため、当初予定していた血中ビタミンD濃度等の分析を行うまでには至らなかった。このため、分析関連費用が次年度使用額となったものである。 今年度、まずはボランティアを募って、血中ビタミンD濃度およびその関連指標の測定を行うことで、血液検査費用が発生するため、今年度持ち越した助成金を使用する。なお、翌年度分として請求した助成金については、当初の計画通りとして使用する。
|
Research Products
(5 results)