2014 Fiscal Year Research-status Report
地域教育資源のネットワーク化による生物多様性の持続的保全教育プログラムの開発
Project/Area Number |
25750075
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
永野 昌博 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (50530755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 持続可能な開発のための教育 / ESD / 環境教育 / 地域教育資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物多様性の保全は喫緊の地球環境問題である。その問題解決の鍵を握っているのがESD(持続可能な開発のための教育)の波及である。しかし,日本の小中学校で生物多様性保全をESD的手法によって実践している例は極めて少ない。その主要因は,生物多様性保全をESD的手法で実践するための教材不足,教員の指導力不足,地域教育資源(生物多様性を知る地域の人材・組織)の情報不足である。そこで,本研究では,地域教育資源ネットワークを構築し,それと学校教育を連携させて,地域の生物多様性を体験的に学習するためのESD教材を開発する。さらに開発したESD教材の実践・普及を通じて生物多様性保全ESD(BESD)を実践できる教員の育成を目指す。 この目的の実現に向け行った平成26年度の研究内容とその成果は以下の通りである。1)地域教育資源(人や団体)の情報の収集を行い,大分県内の研究施設ならびに各地域の自然保全団体等の生物多様性関連組織のリストを作成した。2)1)の組織間の情報を共有し,連携を深めるための研究会を実施した。本研究会の参加団体は約20,参加者は約100名で,大分県内のほぼ全市町村からの参加者がみられ,大分の生物多様性に関連する人と情報の場をつくることができた。3)1)と2)の成果を継承し,大分県内の生物多様性研究の成果や自然保全活動などの情報を掲載した雑誌を創刊した。この雑誌には微生物から哺乳類まで幅広い分類群の17本の論文・報文が掲載された。4)大分市内の哺乳類の生物多様性を現地調査によって調べた結果,4科,12種を記録することができた。5)1)の各団体にアンケート等により県内の在野研究者が個人で保管している標本数の調査を行った結果,植物33,500点,動物500,000点という数字が得られた。6)地域の小学校と地域住民,大学生が協働で哺乳類,両生類,魚類のBESDの開発と実践を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿って,1)地域の生物多様性に関連した情報や人的ネットワークの基盤が整いつつある。2)研究会(情報交流会)の参加団体,参加者の増大しつるある。3)大分県内の生物多様性研究,保全活動情報が掲載された雑誌を創刊することができた。4)市民-研究者の協働による生物多様性調査を実施することができ,多くの生物多様性情報を得ることができた。5)大分県内の生物標本の概数を把握することができた。6)地域の生物多様性を活かし,かつ,地域住民と連携したBESDの実践的開発を行うことができた。 しかし,生物多様性情報を共有・管理するGIS等の開発や教員や地域住民へのアンケート調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究成果により,大分県内における生物多様性に対する関心・理解が高まりつつある。一方,学校における教育現場では業務多忙やBESDが正規の教科でないため,早急な浸透は困難な状況といえる。今後は,直接的なBESDを実践できる教員の育成よりも,間接的ではあるが教員が身近な自然を教材としたBESDを行えるための,実践プログラムの開発に重点を置き研究を進めていく。また,市民(県民)が地域の子どもや教員に対して生物多様性を伝え,教えていくための教材開発も進めていく。また,アンケート対象も教員ではなく,市民を対象にし,市民が生物多様性を研究・保全していくための課題整備・課題解決を目的として行う計画とする。 当初計画ではGISと連動させたデータベースにより大分県内の生物多様性情報を管理・共有することを考えていたが,大分県内の生物多様性情報が散在状況から,まず標本などの一次情報を集約し,それをデータベース化することを先行して実施する方策でいる。
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