2013 Fiscal Year Research-status Report
授業紹介をゲームとしたFDコースバトルの設計と実践
Project/Area Number |
25750078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
辻 高明 秋田大学, 評価センター, 准教授 (00454603)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 学生コースバトル / FDコースバトル |
Research Abstract |
本年度は,学生の授業評価能力の向上を目的とした「学生コースバトル」というゲームの場を設計し,実践した.学生コースバトルは,登壇する学生(以下,登壇学生)が「自分がお薦めする授業」を一つ選出してきてプレゼンし,オーディエンスとなる学生(以下,オーディエンス学生)が,プレゼンされた授業の中でどの授業が最も魅力に感じたかを投票して「チャンプ授業」を選定するゲームである.それは,登壇学生が競争し合う「プレゼン行為」と,オーディエンス学生がそれを評価する「投票行為」から構成される. 本年度,この学生コースバトルを秋田大学内で5回,京都大学内で1回開催し,登壇学生,オーディエンス学生の学びを毎回の実践終了後のアンケート調査により検証した. その結果,登壇学生はチャンプ授業を獲得するため,オーディエンス学生の存在を強く意識しながら授業分析を行っていること,また,オーディエンス学生の投票行為により自身の「授業評価の仕方や内容を評価される」という経験をすることで,授業の評価視点を深めていることが分かった.さらに,オーディエンス学生も他のオーディエンス学生の授業に対する考え方に触れることで自身の授業観を再認識していること,また,他のオーディエンス学生の投票理由や投票傾向を知ることで,自分とは異なる授業の評価視点の存在に気づいていることが分かった.そのように,学生の授業評価能力の向上を授業評価視点の拡張から考察した.その他,本実践への参加は学生にとってプレゼンテーションの訓練になること,参加した学生は学生コースバトルを興味深く感じていることも分かった. 学生による授業評価が真に授業改善に繋がるためには,教員が評価結果を効果的に活用するだけでなく,学生もまた評価者としての力量を高めることが重要である.それを支援する方法として学生の授業評価視点の拡張をもたらす学生コースバトルの意義を実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究から,学生コースバトルが,学生の授業評価能力を高める方法として有効であることを示した.すなわち,登壇学生の「お薦め授業」を選出する行為は,これまで受けた各授業を「評価」する行為であり,また,オーディエンス学生の投票行為は,プレゼンされた各々の「お薦め授業」を「評価」する行為である.よって,登壇学生はオーディエンス学生の投票によって自身の「授業評価の仕方や内容が評価される」ことになるため,評価視点を深めることになる.オーディエンス学生もまた,他のオーディエンス学生の投票傾向や投票理由を知ることで,自身とは異なる授業評価の視点を獲得することになることを示した. そのように,学生コースバトルにおける参加学生のプレゼン行為,投票行為が彼ら・彼女らの学習効果に繋がるメカニズムを複数回の実践に基づいて検証することを成し遂げた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,学生コースバトルの場にオーディエンスとして教員を参加させ,教員にもたらされる学習効果を検証し,学生コースバトルをFDコースバトルとして進化させていく.つまり,参加学生だけでなく,参加教員のプレゼン行為,投票行為と学習効果との関係構造を踏まえ,より学習効果が高まるようそれら行為に関するルール設計を整備する.具体的には,登壇者のプレゼン形式や制限時間,紹介授業の分野,オーディエンスの規模や属性,ゲームのスコアの付け方,道具の必要性の有無などが再設計事項として挙げられる.すなわち,場のルール設計/再設計と参加者の学習効果の分析を循環的に進めることで,従来の授業評価アンケートに代わる,教員と学生の対話を通した新しい授業評価の方法論としてFDコースバトルを仕上げていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の国際会議での研究発表を予定していたが,成果のまとまり具合を考えて翌年度に延期したため.インタビュー調査等で収集したデータのテープ起こしを外注する予定であったが,研究者本人で行える範囲の量であったため敢えて外注はしなかった. 国内での学会発表はもちろん,海外の国際会議で研究成果の発表を行うため,旅費を使用する予定である.また,学生コースバトル,FDコースバトルにおいて,より多角的なデータを収集し分析するため,テープ起こしやデータ整理など研究補助のための謝金を支出する予定である.
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