2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25750093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokuyama University |
Principal Investigator |
時津 裕子 徳山大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90530684)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鑑識技能 / 知覚学習 / 認知科学 |
Research Abstract |
資料を直感的に早く正確に分類(同定)する「鑑識技能」の獲得は様々な専門領域で求められている.しかし考古学のように,体系的な学習法(教育法)が確立されていない領域では,技能の獲得には先天的な資質を必要とするとの誤解もあり,学習の途上で断念してしまう者が多い.本研究課題の目的は,このような学習者に対し,万人がもつ知覚学習システムを利用した利便性の高いトレーニングプログラムを提供することである. 研究初年度である本年の計画目標は,(1) 学習用素材の選定と収集・加工,(2) (1)に対する専門家(考古学者)による評価基準の設定,(3)試作版プログラム(2008年作成)の修正および調整であった. このうち(1)については,まず大学で考古学教育に携わる教員を対象として質問紙調査および聞き取りを実施し,素材選定のための検討会を繰り返し持った.教育現場のニーズに応え,学習者の利益を高めるという観点から,計画当初に予定していた資料カテゴリー(先史時代土器10種ほか)に古墳時代土器カテゴリーを追加するなどの変更を行った.続いて,選定したカテゴリーの資料写真・図版の収集に着手した.収集作業は途上であり,素材の加工作業には着手することができなかった.これを受けて,(2)の学習素材に対する評価基準の設定も,先送りすることとなった.(3)についてはまず,2008年度試作版プログラムを現在の開発環境に合わせて修正し(移植し),動作確認を行った.動作確認の後2名分の新規データも取得し,これまでに得た実験結果の補強を行った.また,新たに追加することになった学習素材カテゴリーに合わせて,パラダイムを一部変更したプログラムの作成に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの原因としては,まず当該年度の計画目標(1)として掲げた「学習素材の検討・選定作業」が難航し,予定よりも長い時間を要したことが挙げられる.研究協力者(考古学者)を対象とした質問紙調査,聞き取り,検討会を経て,素材の選定範囲を一部変更した.計画では,先史時代西日本地域を対象に土器10種ほかを採用する予定であったが,考古学界のニーズに合わせて,より広範囲に分布する古墳時代土器(初期須恵器)のカテゴリーを追加することに改めた.また検討の中で石器カテゴリーについては,本研究課題がベースとする「知覚学習システムを利用した研究パラダイム」に沿わせることが難しいと判明した(当該カテゴリーの学習に適したパラダイムを考案するまで,中心的な学習素材として扱うことは延期する方針である). 計画では本年度中に学習素材の選定を終えて加工処理を進める予定であったが,上記の検討作業と一部計画の変更を受けて,そこまでには至らなかった.この点において,当初計画と比較するとやや進行が遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず選定を終えた学習素材の収集を完了し,加工に着手する. 素材の加工が済み次第,それらを組み込んだ学習プログラム(本作版)のデータ取得と調整作業に移行する(本作版のプログラムは,2008年度試作版を現在の開発環境に合わせて修正済みである).また,専門家による学習素材の評価基準も取得する. 上記の準備が調い次第,学習データを取得し,より利便性の高い学習プログラムへ向けた調整を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では,本年度予算は(1)学習プログラムの教材となる刺激画像の収集・加工作業,および(2)プログラムの調整作業(心理学実験)に要する人件費に多く割く予定であった.しかし以下に述べる理由により,使用に至らなかった. (1)は,考古学研究者(教員)を対象とした事前調査の結果,素材の選定には予想よりも慎重な検討が必要であると判明し,調査と検討会を重ねたが,実際の加工作業には着手できなかった.(2)のプログラムの調整作業については,すでに作成した試作版(2008年)を現在の開発環境へ移植する作業にやや手間取った.作業後に動作チェックとこれまでにの実験結果を補強するため新規データも取得したが,これらの作業には学生ボランティア2名の協力を得ることができたため,特例的に費用を抑えることができた. 上記の事情により本年度は使用しなかったが,計画の進展に伴い必要となる費用であることに変わりはない. 本年度の検討作業を経て,学習素材の選定と収集作業にもようやく目途が付いてきた.次年度には確実に,本プログラムで使用する学習素材の加工作業に着手することが出来る.作業は主に,学生アルバイトを雇用して進めていく(4時間×60日の作業を予定.約21万円). また,上記素材のと並んで,本プログラムの学習データ取得を進める.こちらについては,学生アルバイトの雇用(40名予定)および,考古学経験者(10名予定)の協力に対して謝金の支出を行う(約30万円).
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