2014 Fiscal Year Research-status Report
多様な障害者に対する有効な学力測定を実現するマークシート重依存問題翻案手法の開発
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25750096
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Research Institution | The National Center for University Entrance Examinations |
Principal Investigator |
南谷 和範 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (90551474)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マークシート形式 / 記述形式 / 発達障害者 / 視覚障害者 / 受験場の配慮 / 得点分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度視覚障害者や学習障害者に対して、マークシート形式の採用により冗長化、煩雑化した試験問題を用いて学力測定を実施することは望ましくない。本研究は、このような受験者の有効な学力測定を実現するために、大学入試センター試験に代表されるマークシート重依存問題(問題の表現がマークシート形式に強く拘束される試験問題)をマークシートへの依存を軽減した試験問題に改変する翻案手法を開発する。マークシート形式に変わる解答形式としてオーソドックスな記述形式が存在するが、識別力の一致を実現するため、元問題を翻案するアプローチを採用する。昨年度の研究進捗を踏まえ、今年度は、以下を行った。 1. 昨年度実施したモニター調査(実験)に関する分析を進め、研究方針の検討を行った。『数学の大学入試センター試験と個別試験の関係に関する実証的研究(2)』(名大大学院教育発達科学研究科、2007年)付録に収録された試験問題は、同等の設問をマークシート形式問題と記述形式問題で収録する。この2種の問題を点字冊子問題として製作し、視覚障害学生を対象にモニター実験を実施した(昨年度、第3四半期以降)。理系学部進学直後の点字使用学生という対象者の性質上、実験参加者の確保が恒常的に困難であることが確認された(第1四半期)。 2. 1.を踏まえ、実験参加者の確保が比較的容易で、下記3.と連動して出題形式に関する超教科的な知見を得られる実験の実施に向けて検討・準備を行った(第2・3四半期)。 具体的にはセンター試験「英語筆記」過去問から、パターン化されたマークシート重依存問題を抽出し、これを軽依存問題へ翻案したものとの間で比較実験を実施した(第4四半期)。 3. センター試験のようなマークシート重依存問題には、解答形式のフォーマットに一定のパターンが存在する。こうしたパターンを導出し、類型化の枠を構築した(第1四半期から第3四半期)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書中「研究計画・方法」に示した今年度に関わる目標・マイルストーンのうち、「I. 視覚障害および学習障害受験者における解答形式と特典分布の連関の解明」、III. 「翻案手法の定式化と評価」をおおむね達成している。 ただし、昨年度のモニター調査の結果から、当初の計画の遵守が必ずしも効率的な研究目的の達成に適当ではないことが明らかとなったため、計画変更(Iの推進方法の変更、期間の延長、IIIの前倒しでの開始)を行った。また、結果的にIにおいて、「研究実績の概要」中の平成27年度第2四半期の課題である12.の課題を先取りする形で推進した。 Iに関しては、健常受験者において、「センター試験の得点を横軸に,個別大学2次試験の得点を縦軸にとった散布図に見られる「特異な傾向」、すなわち「大部分の受験者の得点が,2つの試験の0点と満点を結ぶ斜め45度の右上がりの直線の右下部分に位置」するという傾向が観察されるのに対して、視覚障害受験者ではそのような傾向性は確認されないことが明らかとなりつつある。マークシート重依存問題が視覚障害者、発達障害者の学力測定に不適切である重要な原因として、解答作業が要求する文章閲覧・探索の煩雑化が考えられる。そこで当初は考慮しなかったメンタルワークロードの測定を導入し、一層十全な目標達成を推進している。 IIIに関して。センター試験を対象に解答形式のフォーマットに見られる一定のパターンを探索した。その上で導出したパターンの類型化を超科目的な形態で進めた。データベース化について、所内の既存のデータを基礎的素材として活用できることが確認された(「研究実績の概要」中の3. 8. 9.に関連)。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」に記載したように、交付申請書中「研究計画・方法」に示した今年度に関わる目標・マイルストーンには、完全な実施が不要ないし困難と見なしたものや、来年度実施内容を実質的に今年度に繰り込んで実施したものが存在し、必ずしも当初の形態で十全な遂行を行ってはいない。しかしながら総合的に判断して、最終的な研究目的に対する到達度は、おおむね計画通りの地点にあると判断しうる。そこで引き続き同「研究計画・方法」を尊重しつつ、以下の2点に留意して研究を実施する。 1. モニター調査(実験)については、その実験内容・作業課題の設定に際して、実験参加者の効率的な確保を優先することを考慮し、実施・分析を行う。得点・解答時間といった客観的データに加えて、メンタルワークロードを中心とした主観的評価を如何に用いるか(エビデンスとしてどのように活用するか)についての方針を定め分析を進める。 2. 翻案手法の開発においては、所内で既整備の電子化された過去問を活用することで、データベース作成の負担を軽減する。他方で、近年のCBTへの関心の高まりを考慮し、マークシート重依存問題からマークシート軽依存問題への完全自動翻案の可能性とリスクについての論点整理を十分行う。
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Causes of Carryover |
前年度よりの繰り越し金の利用と、データベース入力作業の合理化による今年度分謝金支出抑止の結果、繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画に準拠し、国際学会における総括的な研究成果の公表と調査、翻案マニュアルの整備を中心に計画的な執行を行う。あわせて、所内既導入の物品についてはそれらの活用を心掛け、研究費節減に留意する。繰り越し金については、未完了のデータ入力作業謝金(やく20時間分)へ充当する。
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Research Products
(8 results)