2013 Fiscal Year Research-status Report
日本における幹細胞・再生医療をめぐる言論の横断的分析
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25750098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
標葉 隆馬 総合研究大学院大学, その他の研究科, 助教 (50611274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 再生医療 / メディア分析 / フレーミング |
Research Abstract |
本研究では、「日本の幹細胞・再生医療研究を巡るメディア言論と政策的議論をめぐる関 心/フレーミングの相互作用(Press/Politics)を明らかにし、生命科学をめぐる言論構造の全体像理解に貢献する」ことを最終目標とする。 そのために、初年度は、①幹細胞・再生医療研究をめぐるメディア上における言説を対象として、その支配的トピックスと特徴的フレーム、それらの時系列における変化を定量的アプローチから可視化を試みた。 そのために、幹細胞・再生医療に関連する新聞記事が登場し始める1994年~2013年を対象に、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞の関連記事およそ7000件を収集し、Leydesdorff&Hellsteinのアプローチを参考とした定量テキスト分析の手法を用いて分析した。 その結果、日本の主要紙において、以下の事柄を明らかとした。①1990年代~2003年(Phase1)においては、生命倫理関連審議会の議論に関する報道が主要なフレーミングであった。②2004年~2006年(Phase2)では、韓国で生じたファン・ウソク事件に関わる報道がメイントピックスであり、ファン事件が持つ特性を反映する形で様々な倫理的課題に関するテーマが非常にクローズアップされていたことを意味している。③2007年~2011年(Phase3)では、京都大学・山中伸弥教授らによるヒトiPS細胞の登場をきっかけとして、記事数の急速な増大が認められた。同時に倫理に関する話題が周辺化していくことが可視化された。④2012年~2013年(Phase4)では、山中教授のノーベル賞による記事数の今までにない急速な増大があった。加えて、Phase3の時点で登場し始めていた国策的推進フレームがより明確な形として登場してきたことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、とくに新聞記事を対象とした定量的分析によりフレーミング変化の可視化を試みた。この試みはほぼ達成されたと考えられる。 加えて審議会議事録についてはテキストデータの入手を完了し、予備的な分析を終えている。 以上の結果を踏まえて、2013年度科学技術社会論学会年次大会にてオーガナイズドセッションを企画し、途中経過を報告した。また、2013年度の結果を元に、2014年度の国際幹細胞学会において報告を行い、現場の幹細胞研究者らのコメントも獲得する予定である。 以上のことから、当初の計画をほぼ順調に達成しつつあると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、①での定量テキスト分析によって得られた主要なトピックスやフレーミングの時系列マップを元に、②「特徴的なフレームを含む新聞記事ならびに審議会上の議論を対象とした言説分析」(定性的分析フェーズ)ならびに、③「メディアならびに審議会それぞれにおける言説の定量的・定性的分析結果と政策的展開の対応関係(引用・言及関係)の解明」(Press/Politics検討フェーズ)を進める。 その過程で、25年度に行ってきた研究についてのさらに精査を行い、とりわけ定性的分析の追加分析を積極的に行っていく。 またこれまでの成果を基に学術論文の執筆・投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文執筆に伴う英文校正のための謝金の使用が執行されなかったためである。 現在英語論文の執筆を進めており、それが完了次第、当初の予定通り、英文校正謝金として執行予定である(5月中を予定)。
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