2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25750107
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 主任研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 出土織物 / FT-IR / 埋蔵環境 / 劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古墳出土織物に焦点を絞り、埋蔵環境中における織物素材(繊維)の劣化メカニズムを探るための基礎研究である。出土織物を構成する繊維を分子レベルで調べると、織物が埋蔵する空間や土壌、接触する物質によって劣化状態が様々であった。そのため、埋蔵環境だけから繊維の劣化状態を推し量ることは困難である。 本研究では、繊維の劣化・変質メカニズム解明のため、奈良盆地に所在する古墳から出土した資料を基礎資料として、その劣化状態を調査し、埋蔵環境の再現を試みながら劣化現象を復元的に研究した。 平成26年度は、理化学分析等が可能な織物については、観察及び材質分析を実施し、各資料の劣化状況等を確認した。素材分析調査は、顕微FT-IR分析法を中心に進めた。また、新たな手法として「光音響分光分析法(Photoacaustic Spectroscopy:PAS)」を導入した。PASは測定時に試料の前処理が不要であることから、貴重な文化財資料を破壊せずに分析可能な手法である。しかし、文化財への応用は今まで行われておらず、本研究により試験的に導入した。 平成25年度に引き続き、様々な古墳および遺跡より出土した織物について、分光分析等を進め、化学結合や化学種の差異、測定結果に反映される特長の把握を行った。 出土繊維の調査とともに、現代製織物(植物性繊維)を銅粉とともにpHが異なる数パターンの溶液に浸漬し、人工的に変質させた「再現資料」を用いて、劣化・変質の進行状況、特に化学的な変化の確認を行った。本研究における実験条件は極めて限定的な条件であったが、本研究において、植物性繊維は変質が緩慢であるものの、金属腐食生成物が繊維上で生成し、繊維を脆弱化している可能性が示唆される結果が得られた。
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