2013 Fiscal Year Research-status Report
海溝型巨大地震の震源不均質の階層性が支配する強震動生成メカニズムの解明
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25750146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 公之 京都大学, 防災研究所, 助教 (80452324)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震 / 強震動 / 震源過程 / 巨大海溝型地震 / 2011年東北地方太平洋沖地震 |
Research Abstract |
2011年東北地方太平洋地震を契機とした巨大海溝型地震の震源破壊過程や強震動予測に関する研究により、従来の「アスペリティ≒強震動生成領域」の考え方が十分とはいえないことが明らかとなり、「アスペリティ」と「強震動生成領域」の関係の再定義が求められている。このため、巨大地震に対応した震源過程解析手法を確立し、震源の空間的不均質の階層性と強震動生成メカニズムの関係を解明し、「強震動生成領域」の物理的実体を解明することを主たる目的としている。平成25年度の主な成果は以下の通りである。大学院生1名の協力を得た。 1 震源の空間不均質の階層性を把握するための新しい震源インバージョン解析手法の開発にチャレンジした。インバージョンのターゲットとするデータとして、速度波形そのもののほかに、加速度エンベロープ、Cumulative Squared Accelrationなどを検討した。また、複数の周波数帯に分割して、周波数帯別の波形インバージョンを行う手法の開発に着手した。 2 三次元地下構造を考慮した理論グリーン関数の作成に必要である大規模領域でのグリーン関数(震源から観測点までの波動伝播)を計算するため、差分法による地震動並列化計算コードを整備した。開発した計算機コードで、淡路島の地震の長周期地震動シミュレーション、西南日本における地震波動伝播の計算などを行って、計算機コードや地下構造モデルのチェックを行った。 3 2011年東北地方太平洋沖地震本震の強震動生成領域にもとづく特性化震源モデルの広帯域化を実施した。震源域やや深部の4つの強震動生成領域(Asano and Iwata, 2012)に加え、海溝軸付近の大すべり域に対応する矩形パッチを設定することで、経験的グリーン関数法により周期0.1~50秒までの広帯域地震動をシミュレーションすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は当初計画していた新しい震源インバージョン手法開発のための文献調査ならびに手法開発のための試行錯誤的な作業、三次元地震動計算コードの整備が進捗した。また、強震動生成領域に基づく特性化震源モデルの広帯域化にも成功している。以上のことから、交付申請書に記載した研究目的、研究実施計画に従い、おおむね順調に進展していると判断した。平成26年度以降の研究実施計画について現時点で特段の問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
強震動生成領域(周期0.1~10秒)とアスペリティ(周期約10~100秒)の関係を解明するため、平成25年度に着手した新たな手法開発の研究と必要な計算機コードの整備を継続、発展させる。 研究実施計画に従い、新しい震源インバージョン解析手法の改良や三次元グリーン関数を用いた解析手法の開発を継続し、テスト用データを用いた解析や実データへの適用に基づいて、手法の妥当性や改善すべき問題点を把握する。一次元地下構造モデルによる理論グリーン関数を用いて従来の研究のように長周期帯域で解析した手法、経験的グリーン関数を用いて広帯域化する手法など、入力データ及びグリーン関数の適用性について多角的に検討する。 また、三次元グリーン関数計算に必要となる全国一次地下構造モデルの適用性について、三次元地下構造モデルが短周期側(例えば,2~5秒程度)まで適用可能かどうか、波形の再現性を検証するなどして、検討を進める必要がある。 並行して、強震動生成領域のモデル化に関する研究を進め、強震動予測に利用可能な形で、海溝型地震の強震動生成領域のスケーリングなどの整理を次年度以降に行う必要がある。 関連する資料文献や消耗品などを購入するほか、国内外の学会に参加し、情報収集及び研究発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費で購入を予定していた資料文献・図書の出版が遅れ、平成26年度に購入することとなったため。申請時に予定していなかった他予算による長期の海外出張を実施したため、国内旅費の使用が計画よりも少なくなった。ただし、これによる研究成果への大きな影響が生じないように研究進捗管理に努めた。 平成25年度から継続して実施している研究成果の発表や情報収集のための国内旅費、消耗品等として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)