2013 Fiscal Year Research-status Report
心筋血流量の高精度測定を実現するマルチスケール薬物動態モデルの開発
Project/Area Number |
25750170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
越野 一博 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (90393206)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動態解析 / 生理機能測定 |
Research Abstract |
心筋血流量は、虚血性心疾患を客観的に診断する指標の一つである。心筋血流量測定には、入力関数という信号が必要となる。検査中に繰り返し採血して、血液中の放射能濃度を測定することから、入力関数が得られる。しかし、この方法は侵襲的であり、患者の苦痛や検査法の煩雑さを招く。 本研究の目的は,核医学イメージングの1つである単一光子放射断層撮影法(SPECT)における、入力関数の推定精度を低侵襲的な条件化で向上させることである。SPECTでの心筋血流量測定に使用される放射性薬剤として、Tl-201がある。この薬剤は代謝を受けないため,薬物動態モデルが単純化でき,動態の本質的な考察に適していると思われる。 本年度は、Tl-201の赤血球への取り込みと血漿への洗い出しを記述する血漿・赤血球スケールでのモデルを構築することを目的とした。赤血球と血漿中のTl-201の濃度の時間変化が薬物動態モデルにより記述が可能かを検討した。動態を再現するため、赤血球に1つまたは2つの分画がある動態モデル1と動態モデル2を検討した。赤血球のTl-201の濃度の時間変化について、動態モデル2からの予測値が、動態モデル1の予測値よりも測定値をよく再現していた。動態モデルを特徴付けるパラメータの一つは、平均赤血球ヘモグロビン濃度と有意な相関を示した。さらに詳細な検討が必要であるが、動態モデルによって赤血球と血漿中のTl-201の濃度の時間変化を記述できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放射性薬剤201Tlの赤血球と血漿間での動態モデルを特徴付けるパラメータに関して、生理学的なメカニズムとの関係を明らかにしていないパラメータがある。 パラメータの推定に失敗した測定データがある。その失敗原因が測定手技によるものか、動態モデルの不完全さによるものか、が明らかになっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
放射性薬剤201Tlの赤血球と血漿間での動態モデルを特徴付けるパラメータに関して、平均赤血球ヘモグロビン濃度と有意な相関を示したパラメータが存在した。それ以外のパラメータについても、生理学的なメカニズムとの関係を検討し、生理学的な意味を明らかにする。また、個体間での、パラメータのばらつきの原因を追及する。ばらつきが大きく、血液ガス検査および血液生化学検査から得られる諸パラメータとの相関が認められない場合は、少ない採血回数での入力関数の推定が可能かを検討する。 臓器・体循環スケールおよび撮像視野内外スケールでのTl-201の動態を考慮し、血漿・赤血球スケールでのモデルと組み合わせることによって、入力関数推定精度を向上させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の検討から、推定するパラメータの個体差が大きいことが予想された。そのばらつきの原因を調査するには、当初予定していたよりも多い匹数が必要になることが予想されるため。また、次年度に計画している動物実験において、実験途中での動物の死亡を予想し、十分な匹数でのデータ収集が行えるように考慮したため。 次年度に計画している動物実験は、比較的長い時間を要する。実験および動物の管理には細心の注意を払うが、実験途中で動物が死亡する可能性がある。データ数が不足し、本研究の遂行に支障がないようにするため、次年度使用額も利用して、十分な匹数の動物を購入・確保する。
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