2014 Fiscal Year Research-status Report
心筋血流量の高精度測定を実現するマルチスケール薬物動態モデルの開発
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25750170
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
越野 一博 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (90393206)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心筋血流量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,核医学イメージングにおいて心筋血流量測定に必要な情報である入力関数の推定精度向上である。 当該年度では、心臓を中心とする視野内に存在する臓器および血管系の放射能濃度をもとにして、入力関数の推定精度向上を試みた。その際、呼吸によって生じる胸腹部臓器の動きが、入力関数推定の誤差要因として無視できない場合が存在した。その根拠として、1) 左心室内腔とそこから全身へ血液を供給する大動脈血中の時間放射能濃度曲線に乖離が観察されたこと、2) 心臓、肝臓、横隔膜などの臓器の周期的な移動が時間フレーム間で観察されたこと、である。左心室内腔と大動脈の放射能濃度は、部分容積効果により大きさが異なるが、信号の遅延を考慮すれば、時間曲線の形はほぼ同一であることが知られている。仮に大動脈領域を時間フレームごとに検出し、時間放射能濃度曲線を入力関数として使用しても、心筋血流量の正確な定量は実現できない。それは、心筋血流量測定には、入力関数の応答信号である心筋組織の時間放射能濃度曲線が必要だからである。心筋の局所時間放射能濃度曲線を取得する際には、その位置における心内腔と心筋組織の信号の割合が時間変化しないことが従来の仮定であった。呼吸動によって、時間フレーム間で心臓の位置ずれを補正しなければ、その仮定が破綻する。 この問題を解決することは、入力関数の推定精度向上、したがって心筋血流量の正確な測定に貢献する。今後の展開として、体循環を考慮した動態モデルを構築する前に、複数の血中放射能濃度情報を利用して、画像の時間フレーム間での心臓の位置ずれの補正方を構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
呼吸によって、心臓をはじめとする胸腹部の臓器は移動を繰り返す。当初の研究計画では、核医学イメージングにおいては、呼吸による臓器の移動は周期的であり、ある時間内では平均化され、画像においては無視できる、という仮定のもとで入力関数の推定を行っていた。しかし、この仮定が成り立たない場合、時間フレーム間で心筋および心内腔領域の位置ずれが生じて、2つの領域の信号が混合し、かつその混合する割合が時間変化する。その結果、入力関数や心筋血流量の推定における誤差となる。一様な局所血流量が予想される対象において、それを再現できない場合が存在した。原因の追及のため、測定系、モデル、解析手法を検証し、呼吸動が原因の1つであることを確認するのに時間を要したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
誤差要因の一つとして確認された呼吸動による問題は、本研究の目的を達成する上で、解決すべき課題である。以下のような方針に従い、解決を目指す。1) 大動脈と左心室内腔における血中放射能濃度を利用する。2) 大動脈は構造的に単純であり、呼吸による位置ずれが生じても、その位置を検出しやすい。心筋血流量測定用画像の時間フレームごとに、大動脈を検出することで、その時間放射能濃度曲線Aを推定する。3) 血液分布イメージングにより心内腔の領域Pを決定する。4) 心筋血流量測定用画像の各時間フレームの画像に対してあるパラメータによって決まる剛体変換を適用する。適用後の画像において、領域P内の時間放射能濃度Bを計算する。5) AとBの形状が最もよく一致する、剛体変換パラメータを探索する。
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Causes of Carryover |
当研究の進捗に遅れが生じたためです。具体的には、心筋血流量を推定する方法の妥当性を検討するのに時間を要しました。それにより実験を延期し、本年度の実験に必要な消耗品の購入額が抑えられたためです。 検討の結果、入力関数推定に必要な心内腔血中放射能濃度と、応答信号である心筋組織放射能濃度の混合率が、時間変化することが原因の一つであると判明したので、この問題の解決を含めて、研究を遂行する予定です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期していた実験の実施に必要な消耗品の購入と、最終年度の成果に関して、学会発表のための交通費・宿泊費と指定の使用を予定しています。
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