2014 Fiscal Year Research-status Report
聴診支援装置の開発とその評価~耳管通気法における診断支援装置~
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25750185
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 裕 山梨大学, 総合研究部, 助教 (40516928)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生体音 / 耳管通気 / 周波数解析 / 診断支援装置 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
耳管機能検査について装置も発売されているが,治療と診断を兼ねた耳管通気法が一般的に行われている。しかし,耳管通気法では施行する医師にしか聴診されないため耳管通気音がデータとして残されないことや、診断が医師の聴覚的判定に任されており客観性に乏しいなどの短所がある.そこで我々は耳管通気音を客観的に評価するシステムの開発に着手した。前年度までに患者の外耳道から耳管通気音を録音し,リアルタイムで聴診も行えるシステムを開発した。さらに、耳管への圧力センサおよび環境音を集録できるシステムであった。 本年度はまず、センサ部の改良を行った。回路の部分にシリコンでシーリングした後にカバーを被せ,また,シールド線を用いて騒音及び電磁ノイズ対策を施した。それにより,S/N比は18dB改善した。また,イヤーチップの部分は交換可能であるものとした。 作製した耳管通気音採取装置を用いて,健聴者および耳管疾患患者(耳管狭窄症,滲出性中耳炎)の耳管通気音を採取した。解析を行うと正常では個人差があるがおおよそ2,5,8,10,12,15,20kHz付近になだらかながらスペクトルのピークが確認できた。また,耳管狭窄症では正常音と比べて2kHz付近のピークが特に高い強度を持ち,滲出性中耳炎では時系列波形では通気音の断続が確認できるものであり,スペクトルでは3kHz以下の成分が正常よりも増したものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の目標は耳管通気音採取ハードウェアの作製であり,本年度はそれをさらにS/N比において改善させることができた。これにより目標であったプロトタイプが完成した。 また、本年度の目標はのそのプロトタイプの評価を行った。医師が普段の耳管通気法と同様の治療・診断を行うことが可能であることがわかった。また,正常、耳管狭窄症、滲出性中耳炎患者の耳管通気音を92耳データを採取し,それらの特徴を調べた。 正常では個人差があるがおおよそ2,5,8,10,12,15,20kHz付近になだらかながらスペクトルのピークが確認できた。また,耳管狭窄症では正常音と比べて2kHz付近のピークが特に高い強度を持ち,滲出性中耳炎では時系列波形では通気音の断続が確認できるものであり,スペクトルでは3kHz以下の成分が正常よりも増したものとなった。また,250Hz以下の周波数成分,5kHz以上の周波数成分は診断には影響しないであろう知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
ハードウェアのプロトタイプが完成したので,さらに精力的に耳管通気を必要とする患者の協力を得て,耳管通気音の採取を行う。 採取したデータをもとに更に解析を行う。耳管通気音と病態を比較し,これらを関係づける解析を行う.医師の診断の元となる感覚的な耳管通気音の表現として,以下のようなものが挙げられる.「正常:スー,シュー」.「耳管が固い:ピー,ピュー,カー」.「 滲出液が貯留:ズブズブ,バリバリ」.「耳管の開きが悪い:加圧時,または嚥下時からの潜時が長い」等。これらの表現より,時間周波数解析手法が病態との照合に有効であると考えられる。時間窓の幅,周波数帯域,正規化の有無,等を最適化して,その結果を特徴ベクトルとして,自己組織化マップ等機械学習手法を用いて診断支援装置としてのプロトタイプを作成する。 また,国際会議、国内会議、論文等において発表を行う。
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Causes of Carryover |
研究協力者である東京都立産業技術研究センター服部遊氏との研究打合せが、電話等により十分行え、出張旅費が削減できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実験装置の電子部品費に使用する予定である。
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Remarks |
工学部 情報メカトロニクス工学科 鈴木裕
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