2014 Fiscal Year Research-status Report
電界駆動型流体トランジスタを用いた高速遺伝子センシングシステムの研究
Project/Area Number |
25750187
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 憲児 九州工業大学, マイクロ化総合技術センター, 准教授 (10379290)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | マイクロポンプ / microTAS / マイクロ流体 / Lab on a Chip / 電気浸透流 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人の体質による個別治療(テーラーメード医療)を実現するためには、体質に関わるSNPsなどの特定遺伝子配列を臨床現場で迅速に診断する必要がある。現在主流の解析装置は一台数千万円~一億円と高額であり専門の医療・研究機関でしか使うことはできない。また装置が複雑で解析には時間がかかる問題がある。遺伝子の配列情報を臨床利用するためには、簡便・迅速・安価な遺伝子解析のツールが必要である。 この課題に対して、私は遺伝子解析ツールとして注目されている遺伝子トランジスタの研究を発展させ、本研究で進めるポンプ-バルブ-センサ集積化デバイスの研究と遺伝子トランジスタとの集積化を行い、簡便で迅速で安価な遺伝子解析システムの装置化を目指している。 26年度は25年度に試作を行った電界駆動型流体トランジスタ試作の改良を行った。本デバイスの電界駆動型流体ゲート部は疎水膜を用いてノーマリークローズのゲートを形成する。昨年度の試作では電界駆動バルブ性能が不十分なであったため、流体ゲートの機能を果たせなかった。これを改善すべく本年度は構造の見直しを行った。 バルブ部分は深堀エッチングで作製するSi構造体による疎水性能を利用すると同時に、エレクトロウェッティングの原理を用いて電界駆動の親水性・疎水性の高速切り替えを行う必要がある。そのため、構造体の上の電極形成が必要になり、またバルブ部に疎水性能を持たせる必要がある。現在までは電極形成部の上部に、撥水性膜をパターニングする方法の検討を行っていたが、疎水性が強すぎるため撥水性膜の条件変更を検討した。 また並行して、センサ部の作製プロセスの検討も行った。CMOSプロセスで用いる各装置の詳細な条件出しを行い、駆動系回路のためにCMOSプロセスの条件出しを行った。またその条件を本研究のPre-CMOSプロセスへ適用するために調整を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では電界駆動型流体トランジスタ部の作製と、それに伴う駆動回路の作製が重要な課題である。現在までこの二つの課題の内、駆動回路のプロセス工程の検討は、プロセスフローの構築まで終了している。現在はこのプロセスで作製されるデバイスの電気的特性の調整を行っている。またこの工程を私の考案したPre-CMOS工程へ適用するためには、ボッシュプロセスによる深堀工程を行ったエッチング面の平坦化処理が必要になる。平坦化処理はエッチングプロセスの条件、または追加エッチングにより平坦化を行うため、その条件出しを進めている。この工程によりデバイス作製が可能になると、深堀エッチング底面部にCMOSプロセスを行うプロセスになり、CMOS-MEMS融合工程の画期的な研究となる。現在までの研究で、エッチング条件を選定しつつあり、本研究で必要な駆動回路のプロセス部分は約8割の達成度で進んでいる。 電界駆動型流体トランジスタ部の作製については、流体ゲートの特性に関して課題が生じている。流体ゲートのバルブ部分は疎水性能とエレクトロウェッティングの原理を利用した電界駆動の親水性・疎水性の切り替えを行う必要がある。現在の構造では疎水性能が強く出てしまい、電界駆動の親水性を実現できなくなっている。この問題のため進捗は約50%程度である。問題を解決するために、疎水性能を示す撥水性膜の成膜条件の変更を検討している。これにより、疎水・親水性の切り替えが可能にし、電界駆動のバルブ部の問題を今後の研究で解決する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度までの研究を引き続き進め、電界駆動型流体トランジスタ部の作製と、それに伴う駆動系回路の作製および試作チップの完成を目指す。電界駆動型流体トランジスタに関しては、流体ゲート部の疎水・親水性の高速切り替えを可能にする。そのため、撥水性膜の成膜条件の変更を行い、同時に電極サイズの見直しを行い、電界駆動での親水化(エレクトロウェッティング)が起きやすい構造に修正する。試作を行った後、電界駆動型流体トランジスタとしての基礎データが揃った段階で特許申請を行い、出願と同時に研究内容の公開(発表、論文投稿)を進めて行く。 また研究を進めているPre-CMOS工程を確立し、マイクロ流路および電界駆動型流体トランジスタと駆動回路を集積化した試作チップを完成させる。試作チップの結果を元に、複数素子による流体回路を組み、微量送液制御法を確立させる。制御系回路は昨年度から続けているCMOSプロセスを用いて作製を行い、流路系チップへの集積化を行う。
|
Causes of Carryover |
26年度に購入予定であったハイスピードカメラは26年度での研究の進捗が遅れたため、必要ではなくなった。予定していた予算(109,399円)は27年度に繰り越し、購入費用に充てるようにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は昨年度に購入を延期していたハイスピードカメラを導入し、バルブ部の高速撮影により流動を解析する必要がある。また、プロセス条件だしおよび試作数を数度行うため、Si基板の購入および露光マスクの作製費用が必要になる。研究が進んだ段階で、塩基配列測定の実験を行う必要があるため、塩基用溶媒および洗浄液、塩基サンプル、およびそれらを運用するための保管用冷蔵庫、薬品庫、恒温槽などを導入する必要がある。
|