2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノ医薬品の安全性予測/評価システムの構築を目指した安全性評価マーカーの探索
Project/Area Number |
25750194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東阪 和馬 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20646757)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノマテリアル / 安全性評価マーカー / 急性期蛋白質 / 血液毒性 |
Research Abstract |
本研究では、ナノ医薬品の有効性・安全性を確保するための評価マーカーの開発を図ることで、その有効性・安全性を研究開発段階で簡便かつ迅速に評価する「予測・評価創薬」システムの確立を目指すものである。申請者はこれまでに、ナノマテリアル投与後の血中蛋白質のプロテオーム解析により、急性期蛋白質が非晶質ナノシリカ投与により誘発される負の生体影響を予測する安全性評価マーカーとなり得ることを明らかとした。一方で近年、ナノマテリアルに加えて、粒子径が10 nm以下であるサブナノマテリアルの開発が急速に進展しており、ナノマテリアルのみならず、サブナノマテリアルを対象とした安全性評価マーカーの開発も必須であると言える。そこで当該年度では、これら急性期蛋白質がサブナノマテリアル投与により誘発され得る生体影響を予測するマーカーとなり得るかについて検討した。その結果、急性期蛋白質が、ナノマテリアルのみならず、サブナノマテリアルの安全性評価マーカーにもなり得ることが示された。さらに申請者は、非晶質ナノシリカ投与による急性期蛋白質の増加と生体影響発現との連関解析を図った。安全性評価マーカーの候補タンパク質として同定した急性期蛋白質は、免疫毒性や血液毒性の発現に寄与する可能性が報告されている。そこで申請者は、急性期蛋白質の増加と血液毒性発現との連関解析を試みた。その結果、急性期蛋白質と同様に、造血因子として知られているサイトカインの一種が、非晶質ナノシリカ投与により誘発される負の生体影響の指標となる安全性評価マーカーになる可能性を見出した。今後は、これら血中サイトカイン量の増加と非晶質ナノシリカ投与により誘発される生体影響との連関解析を図ることで、ナノマテリアルの安全性を事前に予測・評価し得るシステムの確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこれまでに、医薬品の助剤や遺伝子送達担体としても期待されている非晶質ナノシリカを用い、急性期での評価ではあるが、生理食塩水投与マウスと非晶質ナノシリカ投与マウスの血中蛋白質の発現変動について、プロテオミクスによる網羅的な解析に着手してきた。これらの成果をもとに、当該年度は、すでに幅広い分野にて汎用・実用化が進んでいるサブナノ白金を対象素材とし、安全性評価マーカーの候補蛋白質として同定されてきた、急性期蛋白質が、サブナノマテリアルに対するマーカーになり得るかについて解析を実施した。さらに申請者は、これまでに見出した急性期蛋白質の生体内での機能に着目し、先行的ではあるものの、非晶質ナノシリカ投与による急性期蛋白質の増加と生体影響発現との連関解析に着手した。その結果、①急性期蛋白質がサブナノマテリアル投与による生体影響を予測する安全性評価マーカーになり得ること、②急性期蛋白質と同様に、造血因子として知られているサイトカインが、非晶質ナノシリカ投与により誘発される負の生体影響の指標となる安全性評価マーカーになる可能性を見出した。即ち、プロテオミクスを用いた安全性評価マーカーの探索・同定の過程で得られた情報、研究成果を発展させることで、新たなマーカー候補分子を同定することにつながったと考えられる。以上のことから、ナノマテリアルの安全性を事前に予測・評価し得るシステムの確立に向けて、当該年度はおおよそ期待通りの研究の進展が認められたと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
一般的に、感染や炎症が起こると、好中球を初めとした炎症細胞の浸潤が起こり、病原体の貪食作用を示す。そのため、それら炎症細胞は感染に対する防御機構の第一線を担うと考えられている。一方で、好中球や顆粒球の異常増加は、リウマチなどの自己免疫疾患などにも特徴的な症状であり、好中球の過度の集積や活性化が組織傷害を引き起こし、誘起された炎症により各種疾患を悪化させることが明らかとなりつつある。これまでに非晶質ナノシリカ曝露による炎症惹起に関するハザード情報は複数報告されているが、その発現メカニズムに関してはほとんど明らかにされていないのが現状である。従って、非晶質ナノシリカ投与後の血球細胞の発現変動を解析することで、非晶質ナノシリカ投与により誘発される様々な生体影響の発現機序の解明につながるのではないかと考えられる。そこで、平成25年度の成果を踏まえ、多様な生体影響に対する安全性評価マーカーの候補蛋白質について、ナノ・サブナノマテリアル-安全性評価マーカーの候補蛋白質-生体影響の連関解析を図る。それにより、ナノ・サブナノマテリアル投与により誘発される生体影響を特異的に評価し得る安全性評価マーカーの絞り込みが可能であると考えられる。さらには、候補蛋白質に対する中和抗体や受容体の阻害剤を用いた方法や、生体マウスにリコンビナント蛋白質を投与する方法などを用い、各種ナノ・サブナノマテリアル投与に起因する生体影響の発現における安全性評価マーカーの候補蛋白質の作用について追究していく予定である。これら検討により、ナノ・サブナノマテリアル投与により誘発される生体影響を特異的に評価し得る安全性評価マーカーの同定につながると共に、これら情報を集積することで、有効かつ安全なナノ医薬品開発を支援し得る、ナノ医薬品の安全性を事前に、かつ網羅的に予測・評価し得るシステムの確立が可能になると期待される。
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