2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25750265
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
谷部 好子 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30582829)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 時間知覚 / 眼球運動 / 身体運動 / Sense of agency |
Research Abstract |
同じ時間が多様な要因によって異なって知覚されることは日常的にも経験される。本研究では身体運動による時間知覚変調のメカニズム解明を目標として掲げ、プロジェクト初年度である当該年度においては行動実験データの収集を重点的に行った。 ◆研究1 研究実施計画に記載のとおり、眼球運動測定実験を実施した。Morroneら(Nat Neurosci, 2005) はサッカード(高速な眼球運動)前後に100ミリ秒程度の間隔で生じた2つの視覚的イベントはその間隔が短く知覚されたり順序が逆転して知覚されたりすることを示している。この先行研究の実験枠組みを採用し、反射駆動型の自動的サッカードの直前に2つの視覚的イベントが提示された場合には順序が逆転して知覚されるが、自発的に開始したサッカードの直前に提示された場合にはそうではないことを突き止めた。この結果は当初の仮説通りである。さらに、サッカードの着地点と時間順序判断との相関を解析し、空間的位置情報の脳内エンコードが時間順序判断逆転に関わっている可能性を示した。脳内メカニズムとして、反射的サッカード条件で空間情報処理に関与したと考えられる lateral intraparietal area の寄与が本研究により濃厚となった。 ◆研究2 研究1では時間情報処理と空間情報処理との関連が示されたものの、眼球運動を誘発したトリガーがいつ知覚され、どのように運動が意図されたのかがあいまいである。運動意図が感覚刺激のタイミングを異なって知覚させる現象の解明は、スポーツや運転の指導の現場への応用が期待されるほか、運動における主体性の疾患の研究への貢献を見込むことができる。そこで研究2では運動を誘発したトリガーのタイミングに着目し、視覚的変化が運動(サッカード及びキー押下→開放の指運動)を誘発した場合にはタイミングが遅延して知覚される現象を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では fMRI 等を用いた神経科学的測定を26年度終盤に開始しすることとしていたが、これを26年度以降に実施することとし、最終年度(27年度)に実施することとしていた眼球運動以外の身体運動についての実験を前倒しで実施した。この予定変更により行動データを十分に収集した上で神経科学的測定を導入することが可能となり、研究の効率化が期待される。 さらに当初、眼球運動以外の身体運動として想定していたのは視野全体に変化をもたらす運動のみであった。しかしながら視覚的な処理を要しない運動でトリガータイミング知覚の遅延現象が生じる可能性を検討する必要から、指運動(キーの押下→解放)を実験タスクとして採用した。結果、トリガータイミング知覚の変調が指運動でも生じるという結果が得られ、効果器や脳内の空間情報処理と関係なく運動の意図が本現象に関与することが示唆された。この示唆は本プロジェクトの普遍性・重要性を増すと考える。 重ねて、26年度までの公刊を目指していた行動データの半分は25年度中の公刊を得た。以上より本プロジェクトは概ね順調に推移していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
トリガータイミング知覚について得られた行動データは今年度中に国際会議および学術雑誌にて発表する。 今年度中盤までにトリガータイミング知覚実験を終了し、神経科学的測定を開始する。当初は fMRI を用いた実験のみを挙げていたが、脳波測定・経頭蓋磁気刺激を用いた実験も行うことにより、運動の自動性・自発性が時間知覚をどのように変調するのかの脳内メカニズムをより精細に解明する。 26年度に得られた知見より、運動の実行のみならず運動意図が時間知覚に影響を及ぼすことが明らかになりつつある。そこで27年度には運動や運動の意図に障害(パーキンソン病・ジストニア・統合失調など)のある方に実験参加協力を求め、26年度に得た結果をさらに固めるとともに、これらの障害についての知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.研究実施計画では fMRI 等を用いた神経科学的測定を26年度終盤に開始しすることとしていたが、これを26年度以降に実施することとし、最終年度(27年度)に実施することとしていた眼球運動以外の身体運動についての実験を前倒しで実施した。このため、想定されていた fMRI 使用料(1実験あたり9万円)が年度内に発生しなかった。 2.現在の研究環境では MATLAB 等のソフトウェアを自ら導入する必要がなく、導入・保守に関わる費用が発生しなかった。 主な支出は下記である。 ・国際会議参加2件(50万円: VSS2014 [フロリダ、5月]・APCV2014 [香川、7月])・論文投稿/公刊料(20万円)・fMRI 使用料(70万円)
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