2014 Fiscal Year Research-status Report
イギリス併合下アイルランドにおける近代スポーツに関する研究
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25750291
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
榎本 雅之 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (40515946)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アイルランド / 近代スポーツ / フットボール / ゲーリック / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、昨年度収集した史料の分析、関係資料の収集、成果の報告を行った。史料の分析は、研究対象時期(1860-80年代)の全国紙Freeman’s JournalやSportに着目して行っている。当時、アイルランドの新聞紙上においてブリテン島のスポーツ結果が定期的に報告されており、この時期、宗主国のスポーツがアイルランドで見聞きできる状態であった。ゲーリック・アスレティック協会(GAA)が1884年に設立されて以降、独立運動を推進する人々からのイングランドのスポーツへの批判が見られるものの、基本的には淡々と様々なイングランドのスポーツが報道されている。 アイルランドでの史料収集は、イングランドのスポーツがどのような過程でアイルランドに定着、普及していくのかを明らかにするため、エリート層の人々の活動に着目し、国立図書館とトリニティ・カレッジの図書館で行った。その結果、トリニティ・カレッジのフットボールクラブでルールを成文化したC. B. バリントンの手紙など、当時の近代スポーツの実相を明らかにするための貴重な史料を収集することができた。また、GAAの地方クラブ関係者にインタビューを行い、農村部のスポーツ関係資料を収集した。 これまでの成果のうち、イギリスで誕生したスポーツであるラグビーが、アイルランドでどのように始められたかについて、第65回日本体育学会で報告し、論文にまとめた(藤井雅人ほか編『体育・スポーツ・武術の歴史にみる「中央」と「周縁」』「アイルランドにおけるラグビーのはじまり-トリニティ・カレッジのフットボールクラブ誕生(1854年)からIRFU(Irish Rugby Football Union)の設立(1879年)まで-」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25、26年度のアイルランドでの史料収集により、一定数のアイルランドにおける近代スポーツの関係史料を収集した。また、アイルランドやイギリスで史料の電子化が進みIrish Newspaper ArchiveやBritish Newspaper Archiveなどで、Webを通して国内から常時閲覧可能なため、必要な資料に随時アクセスすることができている。史料の分析について、イギリスで誕生したスポーツとアイルランドの民族的なスポーツに分類し、それぞれの特徴を検討する。また、平成26年度のアイルランド調査で、GAAの歴史研究者であるポール・ルース氏に助言を受け、イギリス併合下アイルランドにおける近代スポーツついて、イギリスの影響を強く受けた地域に焦点を当て、分析を進める。 研究成果の報告の点では、平成25年度までに収集した史料を基に、「アイルランドにおけるラグビーのはじまり」について、学会報告を行い、論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
継続してアイルランドスポーツ及びイギリススポーツ史の関係資料を収集する。史料の分析については、イギリスで誕生したスポーツであるクリケットやフットボール、アイルランドの民族的なスポーツであるゲーリック・フットボールやハーリングなど、それぞれのスポーツに分類し、検討する。また、アイルランドにおいて、イギリスの影響を強く受けた地域とそうでなかった地域との比較を通して、植民地における宗主国のスポーツの伝播の過程、普及の地域差を明らかにする。 平成27年度は、研究の最終年となるため、史料の分析から得た知見について、日本体育学会やスポーツ史学会で報告し、研究成果を論文にまとめる。
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