2013 Fiscal Year Research-status Report
幕末長崎の近代スポーツ萌芽に関する外交交渉史研究:競馬場・遊歩場設置をめぐって
Project/Area Number |
25750293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田端 真弓 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (60648608)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スポーツ史 / 幕末期 / 競馬 / 外国人居留地 / イギリス / 長崎奉行 |
Research Abstract |
幕末長崎居留地を主たる研究対象とした、幕末日本のスポーツ萌芽に関する外交交渉の経過を明らかにすることを目的とした本研究の課題に対して、今年度は競馬場の交渉がいつ、誰の手によって開始されることとなったのか、また居留地に滞在した外国人がいかなる要求をしていたのかについての検討と考察を進めた。幕末期の居留地において実施されたスポーツには長崎のレガッタや横浜の競馬などが挙げられ、これらは18世紀のイギリスで組織された近代スポーツであった。このようなスポーツは外国人によるクラブの設立やレクリエーション設備の設置を基盤に展開されていたとみられる。 本研究では、長崎における競馬場の設置交渉はイギリス公使主導で開始され、彼らは身体運動の場としてその設置を要求していたことを明らかにし、すでに文久3年には交渉が開始されていたことを明らかにした。競馬場の構想を記したとみられる絵図面と交渉記録から、外国人は競馬場設置を早急に進めることを望んでおり、長崎奉行もそれに同意していたと考えられる。ところが地主の要望や費用、競馬場周辺道路の整備の点に課題を抱え遅延していた。慶応元年末までのこれらの交渉はすべて、長崎奉行とイギリス人の公使らとの間で展開されており、主たる要求はイギリス人によってなされていたのである。 これまでの研究において、幕末明治期に外国人が日本に持ち込んだスポーツは、急速に受容されたとされ、その実態に着目されてきた。しかし、上記のような内容から、本課題は、これまでの研究にみられなかったスポーツの移入や定着の背景にある交渉の内容とその限界を明らかにする、スポーツ萌芽に関する研究である点で意義がある。とりわけ今年度の成果からは、イギリス人にとってのスポーツという観点から幕末のスポーツ移入問題を検討する重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はすでに入手済みの史料を用いて競馬場と遊歩場の議論の関係性とこれらの議論が開始された時期について明確にすることや競馬場の具体的構想内容について明らかにすることを計画していた。平成25年度前半は史料そのものの整理や構成の吟味および一定量の史料解読と解釈に取り組んだ。後半は、これらをもとにした内容の検討の検討と、絵図面史料の整理を実施し、論文の執筆を行った。上記のような経過を経て、次のような研究の進展がみられた。 まず、競馬場議論が開始された時期については、論文において言及して公表することができ、競馬場から遊歩場へと議論が展開されるおおよその時期を特定することができた。この点で外国スポーツ交渉の経過の概要をとらえることができたと考えられる。次に、絵図面と交渉内容の関連について明らかにすることができた点、このような絵図面をもとに学会において成果を公表することができた点において、競馬場の構想内容がより鮮明になった。また、調査によって新たに発掘された史料は、今後、より緻密な研究がなされる可能性を示唆した。 上述のような、研究計画と研究の成果をふまえて、現在までの研究の達成度を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
「9.研究実績の概要」と「11.現在までの達成度」に示したように、平成25年度の研究計画に対して、おおむね計画通りに遂行することができたため、次年度以降も計画通りに実施していくことを考えている。また、その準備状況も整っている。これらに加えて平成26年度は、平成25年度の研究調査によって発掘された新たな史料を精査して、その内容等の検討を実施する。前年度同様、学会での成果公表と論文執筆に取り組む予定である。
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