2014 Fiscal Year Research-status Report
幕末長崎の近代スポーツ萌芽に関する外交交渉史研究:競馬場・遊歩場設置をめぐって
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25750293
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田端 真弓 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (60648608)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幕末期 / スポーツ史 / 競馬 / 外国人居留地 / イギリス / 長崎奉行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題に対して、前年度までに競馬場交渉時期及び交渉内容の一部について検討し、競馬場の設置要求は外国人の身体活動の場として要求されていることを明らかにしている。その経過から設置構想の絵図面史料(研究計画における「その2」の資料に所収されているもの)が残されていることがすでに明らかになっていた。これらの研究の成果をふまえて、本年度は、長崎奉行、英国人公使間の交渉によって提示されたとみられる絵図面史料について検討した。これによって競馬場設置から遊歩道設置案への転換が示され、そのおおよその時期について特定することができた。また、昨年度新たに発掘された「麁絵図」がいかなる時期のものであるかについての検討や外国人居留地におけるスポーツ要求をみることができる欧文資料の検討も同時に実施した。スポーツ交渉は当時の外交交渉の一つであったとみられることから、幕末期における長崎奉行の地理的・政治的拠点としての位置づけについても吟味した。とりわけ欧文資料からは、レクリエーションとしてのスポーツ、社交の場としてのスポーツ、人々の生活と娯楽に着目しながら、研究計画に挙げているような外国人の視点から記された外国人居留地のスポーツの一部を明らかにすることができた。これらの研究成果は日本体育学会(岩手大学)において公表している。今年度における研究実績により、欧文資料のさらなる検討が必要であること、欧文、和文資料の両方を用いた内容の検討が必要であることなど次年度に向けた新たな課題が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに収集した絵図面史料を用いて、競馬場設置交渉の開始から競馬場交渉の終息、遊歩道設置への転換についての内容の公表を予定していた。しかし、研究の経過から欧文資料の検討の必要性に迫られ、その実施に至った。これに予想以上の時間を要する結果となり、研究計画に対する研究の遅れとなっている。その一方、欧文資料の精査を進めることによって当時の外国人たちにとってのスポーツの位置づけ、生活との関係性などが明らかになりつつある。そのような点では本年度以降の研究の進展が期待される。よって、本年度の研究の達成度を「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」と「現在までの達成度」に示したように、研究の進展に若干の遅れが生じてはいるものの、新たに検討すべき点が浮かびあがったという点で、研究内容は当初想定していたよりも深化していると考えられる。今後は欧文資料の検討を重点的に実施し、今年度の研究成果を発展させ、研究成果の公表に向けて取り組む予定である。
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