2013 Fiscal Year Research-status Report
異文化圏の日本人選手・指導者に対する心理支援プログラムの開発
Project/Area Number |
25750304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
高井 秀明 日本体育大学, 体育学部, 助教 (50586146)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 異文化適応 / 文化的自己観 / サッカー / 日本人 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究の最終目的は「異文化圏で苦悩する日本人選手と指導者に対する心理支援プログラムを開発すること」であり、本年度は異文化圏における日本人選手と指導者の課題やニーズを体系化することが課題であった。 研究協力者はサッカーのブンデスリーガに所属する日本人選手と指導者であり、インタビューによりデータを収集した。インタビューの内容は研究協力者からの承諾をえたうえでICレコーダーに記録し、Glaser & Strauss(1967)のGrounded Theory Approachを用いてデータの分析を行なった。なお、データは文脈を考慮して日本人選手と指導者の異文化圏における課題やニーズについて分析した。 その結果、1)「言語習得」、2)「ドイツ人・文化理解と受容」、3)「日本人・文化理解と受容」、4)「効果的な練習方法の追求」、5)「競技力・指導力向上のための学習継続」、6)「民族差別に対する理解と受容」、7)「自己の特性把握」、8)「選手・指導者の特性把握」という8つのカテゴリーが抽出された。カテゴリー間の因果関係、相互連関をみると、まずは語学の習得が必要条件となり、その後に異文化の理解と受容がうまれる。それと同時に自己の特性について関心をもつようになり、日本人や日本文化を改めて認識することになる。また、異文化圏であってもサッカーの選手もしくは指導者として、サッカーに関する研究は継続しなければならない。 日本人選手もしくは指導者は、自分が日本人であるということを前提とし、その特長を把握して最大限活かそうと試みることが重要である。日本人の勤勉さ、細やかな気遣い、チームのために自分を捧げることができる相互協力的自己観は誇るべき日本人の特性であるといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、異文化圏における日本人選手と指導者の課題やニーズをGrounded Theory Approachを用いて明らかにすることを目的としており、その課題やニーズについて体系化するうえで必要なデータをおおむね集めることができたと評価している。この成果の一部は日本体育学会第64回大会で研究発表しており、現在は国外の学術専門誌に投稿し、審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、次年度は異文化圏における日本人選手と指導者に対して、体系化された課題やニーズを中心に個別態度構造に応じて遠隔心理支援を行なう計画である。まずは、本年度の研究協力者の活動拠点であるドイツを訪れ、社会心理学と臨床心理学の特長があるPAC分析を利用し、研究協力者のインテーク面接を実施する。次に、異文化圏という環境下で研究協力者がサッカーに対してどのような悩みを抱えているのかについて個別にその態度構造を明らかにする。そして、研究代表者はそのデータを定期的に実施する研究協力者への遠隔心理支援に有効活用し、研究協力者には必要に応じて心理技法を提供する予定である。最終的には、定期的に実施する研究協力者への遠隔心理支援の実践的効果検証を行なうこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費について少額ではあるが残額が生じたため。 当初の予定通り、次年度の研究費は、心理支援に関わる旅費と研究協力者への謝礼にその大部分を使用する計画である。本年度の研究費の残額もその費用に加える予定である。
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