2013 Fiscal Year Research-status Report
悲観的認知はアスリートの実力発揮に貢献するのか―防衛的悲観主義の観点から―
Project/Area Number |
25750329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
奥野 真由 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (00633215)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 防衛的悲観主義 / 認知的方略 / アスリート / 心理サポート |
Research Abstract |
本研究は、認知的方略の楽観性が“善”、悲観性が“悪”といった二極的な捉え方を見直し、競技場面における悲観性の肯定的な作用を検討することを目的とした。一般的に競技場面では、“負けるかもしれない”“ミスをしたらどうしよう”といった悲観的な認知や思考をできるだけ排除することが、競技の実力発揮につながるとされている。しかし近年、学習場面において“物事を悪い方に考えることで成功している適応的な悲観者”の存在が指摘されている(Norem & Cantor,1986)。彼らのこの特徴は、防衛的悲観主義(Defensive Pessimism:以下DP)と呼ばれ、過去の遂行結果をポジティブに認識しているにもかかわらず、将来の遂行において悲観的になることで考えをめぐらせたり、入念な準備を行い、その結果高い成績を維持している。本研究では、学習場面におけるDPの特徴を背景に、競技場面でのDPの特徴を明らかにし、心理サポートへの活用可能性を検討する。 平成25年度は、競技場面でDPの認知的方略を用いているアスリートが存在しているかどうかを確認し、DPに対する認識について検討するため、大学生アスリートを対象に質問紙調査(競技場面での防衛的悲観主義尺度、DPに対する認識調査)を実施した。競技場面での防衛的悲観主義尺度得点をクラスタ分析した結果、DPの特徴を示すクラスタが抽出され、DPの認知的方略を用いている大学生アスリートの存在が確認された。次に、DPに対する認識について検討した結果、DPの認知的方略を用いている大学生アスリートは、そうでない大学生アスリートに比べ、DPが“効果的である”と認識し好感を持っていることが確認された。競技場面でDPの認知的方略を用いているアスリートは、悲観性の肯定的な作用を認識した上で用いていることが明らかとなり、心理サポートにおいて新たな提言となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、学習場面における防衛的悲観主義の特徴を背景に、競技場面での防衛的悲観主義の特徴を明らかにし、心理サポートへの活用可能性を検討することを目的とした。そこで、次の3点について明らかにすることとした。①アスリートが競技場面で用いている認知的方略の種類や特徴、傾向を明らかにする。②防衛的悲観主義の認知的方略について、競技場面に特化した特徴を明らかにする。③どの様な場面・状況において防衛的悲観が用いられ、アスリートは行動するのか、時間軸に沿って分析し、心理サポートを行う時期とその内容について検討する。平成25年度は、競技場面で防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートが存在しているかどうかを確認し(①)、防衛的悲観主義に対する認識について検討した(②)。大学生アスリートを対象に実施した質問紙調査(防衛的悲観主義尺度、防衛的悲観主義に対する認識調査)では、防衛的悲観主義の認知的方略を用いている大学生アスリートの存在を確認し、競技場面で防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートは、悲観性の肯定的な作用を認識した上で用いているということが明らかとなった。①②についておおむね順調に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、競技場面で防衛的悲観主義の認知的方略を用いているアスリートを対象とし、インタビュー調査を実施する。防衛的悲観主義の認知的方略を、競技場面のどの様な場面で用いているのか、また課題に対する捉え方や取り組み方を具体的に明らかにする。さらにそのインタビューデータをもとに、アスリートが課題に直面してから対処を終えるまでの時間の流れの中で、認知の移り変わりを捉えることを前提に質的分析を行う。その結果から心理サポートを行う時期とその内容について検討する。加えて、データの偏りを最小限にするため、平成25年度に実施した質問紙調査(防衛的悲観主義尺度、防衛的悲観主義に対する認識調査)の追加調査を今年度に予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に計画していたインタビュー調査の研究協力者と研究代表者の都合が合わず、実施することができなかった。よって、主に旅費、人件費・謝金を次年度へ繰り越すこととなった。 平成26年度にインタビュー調査を実施する。インタビュー実施場所は研究協力者の都合を優先するため、旅費として使用する。また、研究協力者への謝金、インタビューデータの質的分析に必要な人件費・謝金として使用する。
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