2014 Fiscal Year Annual Research Report
トレーニングによって骨格筋代謝機能に形成されるマッスルメモリー機構の解明
Project/Area Number |
25750330
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 新 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00460048)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 骨格筋 / 糖輸送体GLUT-4 / トレーニング / マッスルメモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究において、トレーニングによって糖輸送体GLUT-4の発現量が一度増加した骨格筋では、脱トレーニングによりその適応が消失したとしても、再度運動刺激が加わった場合に、トレーニング効果が得やすい状態となっていること、すなわちトレーニングにより代謝機能にマッスルメモリーが形成される可能性が示唆された。最終年度においては、運動によって骨格筋にマッスルメモリーが形成される際のメカニズムの解明を目指して研究活動を行った。トレーニング刺激がヒストンのアセチル化という形で長期間にわたって記憶されることで、GLUT-4遺伝子が将来のトレーニング刺激に対して速やかに応答できる状態になっている、という仮説をたてて、まずはヒストン全体のアセチル化状態を測定した。その結果、統計的に有意ではないものの、トレーニングおよび脱トレーニング後のラット骨格筋においてアセチル化ヒストン量が高値を示す傾向にあった。そこで、GLUT-4遺伝子のプロモーター領域におけるヒストンのアセチル化量を特異的に解析するために、クロマチン免疫沈降法を用いた分析を行ったが、非トレーニング群とトレーニング群の間に有意な差は認められなかった。また、ヒストンのアセチル化がGLUT-4遺伝子の発現のしやすさに関与しているのであれば、人為的にヒストンのアセチル化を亢進させることで、GLUT-4が発現しやすい状況を作り出すことができると考えられる。そこで、ヒストンのアセチル化を亢進する作用を持つ酪酸を摂取させながら運動を行わせたラットの骨格筋におけるGLUT-4発現量を測定した。その結果、骨格筋におけるアセチル化ヒストン量の増加は認められたものの、GLUT-4の増加は認められなかった。以上の結果から、トレーニングによって骨格筋の代謝機能に形成されるマッスルメモリーのメカニズムに、ヒストンのアセチル化は関与しない可能性が示唆された。
|