2014 Fiscal Year Research-status Report
乳酸による骨格筋ミトコンドリア新生のメカニズムの解明
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25750331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星野 太佑 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (70612117)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳酸 / ミトコンドリア / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、6時間の乳酸10mMの刺激が、骨格筋のミトコンドリア新生に影響を与えなかったことから、今年度は、24時間の乳酸刺激が、ミトコンドリア新生に影響を与えるのか検討した。方法は、昨年度と同様、ラット (~100g)の滑車上部筋を摘出し、適度なホルモン、抗生物質を含んだMEM alpha midium 2.5 mlの中に浸した。筋とmidiumが入ったフラスコに95%O2-5%CO2のガスを注入しながら、ウォーターバスインキュベーターを使って35℃でインキュベーションした。ラット1匹あたり左右の筋を一つは乳酸あり(10 mM)、もう一つはコントロールとして乳酸なしのmidiumに浸し、24時間インキュベーションした。その結果、ミトコンドリアの酵素のタンパク質量、ミトコンドリア新生のマスターレギュレーターであるPGC-1alphaのタンパク質量に乳酸刺激による変化はみられなかった。一方で、リアルタイムPCR法により、mRNA量を測定したところ、COX4には変化はみられなかったが、PGC-1alphaとベータ酸化にかかわるHADのmRNA量は乳酸刺激により、有意に減少するような変化がみられた。このことは、先行研究(Hashimoto et al.2007)と反対の結果であり、乳酸によってミトコンドリア新生が抑制される可能性を示唆している。しかし、実験条件の違いよる影響は大いに考えられる。例えば、インキュベーション前には、培地の乳酸濃度はコントロール群で1.4mM、乳酸刺激群で12.3mMであったが、24時間のインキュベーション後には、コントロール群で平均11.5mM、乳酸刺激群で25mM以上と大きく増加していた。このことは、インキュベーション中に、骨格筋から乳酸を放出している可能性を示唆している。さらにこの結果は、培地(細胞外)の乳酸だけではなく、骨格筋で産生され、放出される乳酸の重要性を示唆している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、研究者自身の研究機関の異動があり、年度前半は研究の遂行が滞ったものの、年度後半はハード面が整ったことから、ある程度計画通り研究を遂行しているのもの思われる。一方で、先行研究とは異なる研究結果がでたことから、もう一度実験系の妥当性を確認し、さらなる研究の発展にむけて、新たな視点から研究に取り組む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
培地中の乳酸濃度が予想以上に増加していたことから、ラット骨格筋を摘出し、インキュベーションする方法の妥当性を再度検証する必要性が出てきた。別の実験系として、骨格筋培養細胞を用いた実験系を利用することで、この問題を回避することができる可能性がある。培養細胞を用いた実験系の利用を視野に入れながら、今後も、骨格筋内の乳酸濃度とミトコンドリア新生の関連の解明を目標に研究を遂行していきたい。
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Research Products
(3 results)