2015 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の筋収縮活動が肝臓のインスリン作用を増強する分子機序の解明
Project/Area Number |
25750337
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
越中 敬一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (30468037)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 身体運動 / インスリン抵抗性 / 肝臓 / 熱刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体運動によって骨格筋の筋収縮活動が亢進すると、活動筋と肝臓のインスリン作用が増強する。しかしながら、骨格筋とは異なり運動には直接動員されていない肝臓に運動適応が生じる作用機序は明らかではない。本研究では、身体運動によって生じる骨格筋の熱産生が肝臓に拡散し、間接的に肝細胞を熱刺激することによって肝臓が運動適応を惹起している可能性を検討している。また、肝臓が熱刺激に対する適応として、肝臓から分泌されるヘパトカインの発現・分泌調節を介して、骨格筋のインスリン作用を調節している可能性も合わせて検討している。 ラットに回転ゲージによって自発的な走行運動をさせると、3週間後には肝臓の中性脂肪量が減少し、ヘパトカインであるLECT(Leukocyte cell-derived chemotaxin)2の蛋白発現量が減少することを確認した。LECT2は骨格筋に作用してインスリン抵抗性を惹起するホルモン様分子であるため、身体運動による骨格筋のインスリン作用の増大効果は、ヘパトカインの産生・分泌調節を介している可能性が高い。 そこで、同様の現象が骨格筋の熱刺激によっても生じるか否かを調べた。ラットの後肢骨格筋を熱刺激すると、肝臓周辺の腹腔内温度の上昇が確認できた。この刺激を一週間処置した結果、肝臓の中性脂肪量は低下傾向を示し、肝臓のHeat-shock proteinの蛋白発現量が増加した。その際、肝臓のLECT2蛋白発現量が身体運動時と同様に減少することを認めた。熱刺激処置の期間において、摂食量や行動量に非刺激群との差が認められないことから、これらの肝臓の適応は骨格筋からの熱の拡散に起因すると考えることができる。以上の結果は、身体運動による末梢組織のインスリン作用の増強効果において、活動筋からの熱産生とその拡散による肝臓の適応が重要な役割を担っている可能性を強く示唆している。
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