2013 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸がん検診受診促進へのエンターテイメントエデュケーション手法の応用とその評価
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25750347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河村 洋子 熊本大学, 政策創造研究教育センター, 准教授 (00568719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘルスコミュニケーション / ヘルスプロモーション / 子宮頸がん検診 / エンターテイメントエデュケーション |
Research Abstract |
本研究の目的はエンターテイメント・エデュケーション(EE)を若年層の子宮頸がん検診受診促進に応用し評価する過程で、我が国におけるEE手法の有効性と効果のメカニズムを検証し、理論的かつエビデンスに基づくEE手法を用いた若年層向けの子宮頸がん検診促進のための「ツール」・「パッケージ」を開発することである。初年度は開発のための形成的評価を研究活動の主軸として位置づけ先行研究レビュー、対象となる20歳代前半女性に対するフォーカスグループインタビュー(FGI)を具体的な活動として計画し研究を進めた。 先行研究のレビューではEEに限定することなく、拡大されたトランスメディアという概念にも視野を広げ、他の関連する厚労科研と関連させて実践家と研究者に直接的に話を聴き、ディスカッションした。また、EEの活用に際し関連するマーケティングの理論について再度レビューし、実践に取り入れるべき要素を別の切り口で整理した。 子宮頸がん検診受診勧奨の対象となる女性に子宮頸がん検診受診に関してFGIでは、協力者のリクルートに難航したが、受診経験者(4名)と未受診者(7名)を3組に分けて実施した。本研究には女子大学生・大学院生が主体的に参加しておりチームでFGIを振り返り、さらに友人との会話などを通して提供される知見も蓄積されてきた。 今年度は形成的評価に留まる予定であったが、活動を進める中での地域組織との連携と学生を中心とした研究チームの意向として試行的にプログラムを制作し実装した。特に、これまで積み上げてきたEEラジオドラマに加え、新たなEEの切り口として、ゲームイベントを企画・実施し、テレビ局を含む地域内の他組織との連携体制も強化され、来年度に向けた活動の礎を構築につながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定した調査というかたちでのデータ収集活動は当初の計画よりも達成度は低い。しかし、活動推進体制の強みを活かし、初年度の形成的評価という段階としての目的は達成することができた。まさに対象者世代である女子大学生・院生のチームとして取り組む中で得られた「集合知」は蔑ろにできないほどに、十分に開発に寄与するものである。 計画以上に進め、試行的なプログラムの開発と実働ができたことの大きなメリットして、2点をあげることができる。まず、試行的な活動を基に改善を前提にプログラムの開発が進めることができる点である。マスメディアを活用し、地域社会をフィールドとするEE手法の研究では実社会での実践を通して、改善を重ねる中で、より効果的なプログラムへの開発につなげていくことになる。より完成度の高いプログラムを効果検証の対象とすることができ、検証結果に基づくパッケージの内容もより良いものにすることができる。 第二点は、試行的な活動の中で地域の中の組織と連携関係を強化し新たに構築することにつながった点である。具体的にはNPOや学生グループ、さらに地元テレビ局が含まれる。このような連携関係は、子宮頸がん検診受診促進の総体的な動きにつながると言う点で有用であるだけではなく、研究活動を展開していく上で心強いものである。マスメディアを利用するEEプログラムでは、その効果の検証において多角的なデータ収集が必要である。社会全体で子宮頸がん検診受診勧奨のメッセージが発信される時に、効果の源の特定が難しくなるということがあるが、連携関係を活かし実社会の実状を反映した研究デザインを実現することも視野に入れることが可能になった。 本研究の目的を鑑みると計画以上に進んでおり、プログラムの評価に関してより発展的な可能性を生んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は当初の計画よりも進むかたちで、プログラムの開発を進める。前年度に試行的に制作・企画・実装したラジオドラマプログラムとゲームを基礎に、メッセージの届け方に関して改善していく。この改善の段階では、初年度以上に理論的な背景を取り込む。また、当初の予定にはなかったが、改善されたプログラムを実装し、効果を検証するためのデータ収集を平行して進め、さらなる改善に活かす。 現在の熊本市近郊というフィールドの状況をみてみると、本研究による地域社会でのマスメディアを含む子宮頸がん検診受診勧奨に関するメッセージの発信の他に、他の多様なメディアによるものも増えていくことが予測される。最終年度に計画している包括的な効果検証では、複数の効果源が多層構造をなしている中で、EEプログラムの実態を捉える必要がある。しかし、本研究の開発したプログラムに限定するというように縮小的に考えるのではなく、多層構造をなす他活動も含めた地域社会における「ムーブメント」の効果全体を捉える有用性は高い。さらに、その中で本研究によるEEプログラムの効果が整理して示すことができるような研究デザインを実現するように計画を進めていく。 それには行政や医療機関との連携関係が重要な役割を果たす。昨年度の礎を活かしつつ、今年度の活動の中でさらに連携関係の強化と拡大を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微調整による残額であり、当初の計画以上に研究活動は進展している。 今年度の物品費として使用する。
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