2014 Fiscal Year Research-status Report
疲労認知メカニズムの統合的理解をめざした脳磁図研究
Project/Area Number |
25750351
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石井 聡 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 病院講師 (90587809)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 疲労 / 疲労感 / 疲労の認知 / 疲労感の想起 / 身体的な疲労 / 身体的な疲労 / 脳磁図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では時間分解能・空間分解能に優れた脳機能イメージング手法である脳磁図計測を用いて、疲労に関連する複数の脳部位における脳電気的活動の時間的前後関係や相互の機能的つながりを明らかにする解析を行うことで、疲労認知に関わる神経メカニズムの全体像を明らかにすることを目標としている。本年度は平成25年度に実施した精神的な疲労の記憶に関する研究の結果を詳細に解析すると共に、身体的な疲労においても同様の神経メカニズムが働いているのかを検討する目的で、新たに身体的な疲労の記憶に関する神経メカニズムの研究を行った。精神的な疲労の記憶に関する研究では、疲労感の想起に関連してδ帯域で左角回におけるパワー値の低下やα帯域およびβ帯域での左縁上回におけるパワー値の低下が観察されたことに加え、β帯域での左縁上回におけるパワー値の低下の程度が課題中に生じた疲労感の程度と正の相関を示すなど、これらの脳部位が精神的な疲労感の想起に関わっていることが示された。身体的な疲労の記憶に関する神経メカニズムの研究では15名の健常成人男性を被験者とし、10分間のハンドグリップ課題により実際に経験した身体的な疲労感を、事後の脳磁図測定中に想起してもらう実験を実施した。空間フィルター法による脳磁図データの同期・脱同期解析の結果、身体的な疲労の想起に伴って精神的な疲労の想起と共通する脳電気活動に加え、これまでに疲労感との関連が指摘されている脳部位など広範囲における脳電気活動を認め、疲労感の神経メカニズムの全体像を明らかにする上で貴重なデータが得られたと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標はこれまでの研究で明らかになってきた後帯状回と前頭前野を含む疲労認知のネットワークを中心に、疲労の認知に関わる時空間ダイナミクスを明らかにすることであった。本年度実施した身体的な疲労の記憶に関する神経メカニズムの研究では、単に身体的な疲労においても精神的な疲労の想起と同様の神経メカニズムが働いているのかを示すのみにとどまらず、疲労感の想起に後帯状回や前頭前野を含む前頭葉から側頭葉・頭頂葉にいたる広範な脳部位の関与していることが示唆された。本年度の研究成果は、疲労感に関わる複数の脳部位を同時に評価できるような実験パラダイム作成の可能性を示しており、疲労感の神経メカニズムの全体像を明らかにする上で重要な知見であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成26年度に引き続き疲労感の様々な側面に関わる脳磁図計測を繰り返し実施することで、疲労感の神経メカニズムの全体像を明らかにする。具体的にはこれまでの疲労感研究では扱ってこなかった疲労感の予測といった新たな視点を取り入れ、これまでの研究で明らかになってきた後帯状回と前頭前野を含む疲労認知のネットワークとの関連性を中心に、疲労の認知に関わる時空間ダイナミクスを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
成果発表に関する支払いが平成27年4月にずれ込む見込みとなったことが主な理由である。また必要な経費を使用した後の端数を含んでいる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は平成27年度に必要となる経費の一部として使用する。主には平成26年度の研究成果の論文発表費用に充てる他、被験者に対する謝金や解剖学的情報取得のためのMRI撮像の費用を中心に、解析用ソフトウェアの更新、データ記録媒体、試験関連書類の印刷費、通信費、論文投稿費、研究成果発表のための学会出張費などの経費の一部に使用する。研究費使用計画に大きな変更は生じない。
|