2013 Fiscal Year Research-status Report
幸福感を高める前向き思考が心身の健康に及ぼす効果の検討
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25750354
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会医学 / 応用健康科学 / 幸福感 / セロトニントランスポーター遺伝子多型 |
Research Abstract |
現代社会はストレス社会である。平成20年度版国民生活白書によれば、日本国民の半数以上が家庭の悩み、仕事の悩みなどの社会心理的ストレスを感じていることが報告されている。また、ストレスが原因で発症する、うつ病などの精神・身体疾患の推計患者数が年々増加している。こうした精神身体疾患の発症を予防し、心身の健康を増進するために、本研究では先行研究で疾病率や致死率との関連が見出されている「幸福感」に着目し、幸福感に関連する要因は何か、幸福感を高めるような心理学的介入法を実施することによって心身の健康が増進されるのか、ということについて心理学的・生理学的に検討した。 今年度の成果として、まず、私達の遺伝的特性と幸福感との間に関連があることが見出された。気分や生体リズムに深い関連のある神経伝達物質であるセロトニンの伝達に関係する遺伝子であるセロトニントランスポーター遺伝子には多型が存在することが知られているが(5HTTLPR)、5HTTLPRの遺伝子型(SS、SL、LL)で実験参加者を群分けすると、L遺伝子型を持つ個人の方が有意に幸福感が高いことが示された(Matsunaga et al., Psychology of Well-Being, 2013)。したがって、セロトニン機能は幸福感と関連することが示された。 次に、健康な成人男女ボランティアに1週間、その日にあった『良いこと』を三つ書き出し、良いことが起きた理由を考えるという『Three good things』を行ってもらい、介入前後でのこころとからだの状態を比較した。その結果、介入前後で有意に自覚的うつ症状が軽減したが、幸福感の上昇は残念ながら認められなかった。自覚的うつ症状を軽減させるためには1週間の介入で効果があるが、人生に対する前向きな認知を獲得するためには1週間という短期間では十分ではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、セロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)と幸福感との関連を日本人においてはじめて明らかにした。5HTTLPRの遺伝子頻度は地域差があることが知られており、アメリカではL型の個人が多く、日本ではSS型の個人が多い。アメリカ人と日本人の幸福感を比較するとアメリカ人の方が幸福感が高いことが知られているため(Diener et al., Soc Indic Res,1995)、幸福感の国際的差異が私達の遺伝子特性で説明できる可能性が示唆された。このことは実験計画当初は予想していなかったことであり、非常に有益な結果が得られた。 また、本研究において幸福感を高めるような心理学的介入方法の確立を試みた。今回、幸福感を高めるための心理学的介入方法として、アメリカにおいてその有効性が実証されている『Three good things』という方法に着目し、1週間の介入を行った。その結果、1週間の介入で自覚的うつ症状に対して効果は認められたものの、幸福感に対して有意な効果を見出すことができなかった。実験実施前に予想した結果とは異なる結果が得られたため、研究方法について少し見直し再度実験する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査において、統制介入群として実施した『なんでもいいのでその日にあった出来事を日記に書く』という介入方法が、予想に反して有意に幸福感を上昇させることが示唆された。 実験参加者の内省報告を聞くと、『Three good things』は良い事ばかり考えさせられるため、毎日良い事ばかりないのでネタを探すのに苦労する、良いことを考えている自分にイライラする、など、逆にネガティブな感情を喚起させるものであった。反面、何も規制をしない日記を書くことは、ネガティブなことでもポジティブなことでも書けるため容易であるし、ネガティブなことを書けばストレス発散になり、ポジティブなことを書けばポジティブな記憶が残る、という良い報告が得られた。 このことから、平成26年度においては『なんでも日記』介入に着目し、1週間の介入による幸福感上昇に対応して変化する生理学的現象を見出す。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Sense of Acceptance: Key Factor of Social Learning2014
Author(s)
Kawamichi H, Yoshihara K, Kitada R, Matsunaga M, Sasaki A, Yoshida Y, Takahashi H, Sadato N
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Journal Title
Dynamics of Learning in Neanderthals and Modern Humans Volume 2: Cognitive and Physical Perspectives, Replacement of Neanderthals by Modern Humans Series,
Volume: 2
Pages: 217-220
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Brain-immune interaction accompanying odor-evoked autobiographic memory.2013
Author(s)
Matsunaga M, Bai Y, Yamakawa K, Toyama A, Kashiwagi M, Fukuda K, Oshida A, Sanada K, Fukuyama S, Shinoda J, Yamada J, Sadato N, Ohira H.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 8
Pages: e72523
DOI
Peer Reviewed
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