2013 Fiscal Year Research-status Report
肥満治療におけるうつ状態に基づいたリバウンド防止と心血管病予防法の確立
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25750355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
姫野 亜紀裕 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究員 (40533831)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | うつ関連因子 / 肥満症 / 減量治療 |
Research Abstract |
1、肥満症・糖尿病多施設共同前向きコホート構築とうつ関連因子の検討:肥満症・糖尿病患者(BMI≧25、またはHbA1c≧6.5%)を対象に、Self-rating Depression Scale (SDS)等ネガティブな心理・うつ尺度及び笑い・楽観性・主観的幸福感・生きがい・社会的支援等のポジティブな心理的因子に関する質問紙調査と下記評価項目に関するデータベースを構築し、食事・運動療法による減量治療を施行し、うつと肥満・減量治療に関する因子の関連を解析している。 2、現在、肥満者516例と非肥満者117例にて遺伝子タイピングが終了し、各SNPs多型別減量成功率・リバウンド率を解析し、うつ関連SNPsと減量治療効果との関連を解析している。 3、コホートの結果:2014年4月時にコホート登録数が1334例に達し大規模データベース構築に成功している。追跡調査においても80%前後の追跡率を維持し、5年追跡症例数も300例に達している。5年間での脳心血管イベント発症は29例(累積発症率8.0%)と確認済である。うつの割合については、SDSテストの有効回答が取得できた622例において、その平均は41.6± 9.1点であり、「うつ状態」と判断できる症例(39点以上)は373例(60.0%)、「うつ」と判断できる症例(53点以上)は75例(12.1%)であり、健常人の報告より高率である事が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、2014年4月時点で肥満症・MetSの多施設共同前向きコホート登録数が目標例数・1000例を超え、1334例(昨年より59例増加)に達し大規模データベース構築した。また、研究計画の評価項目の測定も順調である。また、80%前後の追跡率を維持し、5年追跡症例数も300例に達した。5年間での脳心血管イベント発症は29例を確認した。今後、肥満症における心血管イベントとうつ状態との関連の後ろ向き解析も可能となり、順調である。 2、申請者は、肥満・糖脂質関連272遺伝子712SNPs遺伝子多型を既に解析して、その中でも特に、インスリン・レプチン抵抗性に関するPTP1B遺伝子SNPsと最高体重及び減量治療不成功との有意な関連を認めた(第32回日本肥満学会, 2012, 論文投稿準備中)。また、肥満者516例と非肥満者117例において、うつ・報酬系に関連する遺伝子の遺伝子多型(SNPs)を検討し、うつや摂食調節に関与するBDNF遺伝子(BDNF Val66Met)、アルコール依存症と関連が報告され報酬系に働くドーパミン受容体(dopamine D2, D4 receptor:DRD2, DRD4)、抗うつ薬・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の標的であるセロトニントランスポーター遺伝子多型 (5-HTTLPR)等の遺伝子多型を検討し、一部のSNPsと心血管疾患(CVD)リスクや減量治療効果との関連を認めている。 3、現在、肥満外来通院肥満患者186例において、初診時のポジティブな心理的因子に関する質問調査、身体・血液検査を行い、追跡調査を施行している。今後、うつテストによる抑うつ状態との関連も解析を行い、心理的にポジティブな要因とネガティブな要因各々の肥満形成に対する関与が解析でき、SNPsとの関連も検討できる点が画期的である。
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Strategy for Future Research Activity |
I.臨床的研究:糖尿病・肥満症前向きコホートにおける縦断研究:前年度の研究計画にて、うつ関連因子(ホルモン・SNPs)の長期の減量治療効果(成功率・リバウンド率)や予後に対する影響を検討する。(1)減量不成功者・成功者(リバウンド有・無)別にうつ状態・遺伝素因・CVDリスク改善度を比較する。(2)うつ状態の有無別に減量成功・不成功・リバウンド率・CVDリスク改善度を比較する。(3) 肥満症コホートにおける介入研究として、うつの強いタイプ・弱いタイプと減量成功・不成功群のタイプ別に治療プログラムを考案する。うつの強いタイプや減量不成功群には、通常治療に以下の強化療法・介入プログラムを加える。①頻回な個別栄養指導、②生活習慣改善ツールを用いた療養指導(体重グラフ・食事記録指導・万歩計携帯)、③心理カウンセリング、④対面・電話カウンセリング。以上のストレスマネジメントによるうつ状態改善度と行動変容(減量成功・リバウンド)やCVDリスク改善効果との関連を通常療法群と比較する。 II. 基礎研究:(1)単球系細胞, 血管構成細胞や脂肪細胞との共培養系を用いた検討:肥満・MetSの単球やTHP-1細胞等の共培養系を用い、うつ関連因子(コルチゾールや減量治療に関連があった遺伝子・新規分子)の炎症惹起・動脈硬化作用とその作用機序を検討する。 (2)糖尿病・肥満モデル動物における検討: 1)遺伝性肥満・高脂肪食負荷肥満モデルにおいて、減量治療過程におけるうつ関連遺伝子の中枢・末梢での発現変化を検討し、その作用機序をin vivoで検証する。肥満度別にうつテストによる耐性やストレス性内分泌機能調節(ACTH、プロラクチンの分泌亢進など)を検討する。 2)Apo E KOや血管障害モデルマウスにおけるうつ関連遺伝子の発現を検討する。 以上、うつ関連因子の肥満・CVD進展への影響と作用機序を基礎・臨床的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に実施を予定していた研究計画のうち、一部の生理活性物質の測定が期間内に終了しなかったため、当該計画の実施に必要な経費を次年度使用分とした。 以下の計画に基づいて研究費を使用し次年度研究計画を推進する。 1.消耗品:①ヒト・マウスホルモン測定(ELISAキット代・血液検査外注費):約15万円、②分子生物学関連試薬(MACS/FACSの抗体、PCRのプローブ・キット等):約15万円、③培養関連試薬(ウシ胎仔血清、メディウム、抗生物質等)(細胞実験):約10万円、④細胞機能解析関連試薬(蛋白測定試薬、RNA調製試薬、定量PCR関連試薬、サイトカイン測定試薬、遺伝子導入関連試薬、ノックダウン関連試薬等)(細胞実験):約30万円、⑤飼育管理費(動物の購入代、管理代、餌代含む)(動物実験):約10万円。2.旅費:国内外の各学会での成果発表のための旅費:約10万円。3.謝金:研究補助員数名の実験補助代、外国語論文の校閲:約50万円。4.その他:印刷費・研究成果投稿料等:約10万円。
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