肥満治療におけるうつ状態に基づいたリバウンド防止と心血管病予防法の確立

2014 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 25750355
• Research Institution: Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center
• Principal Investigator: 姫野 亜紀裕 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究員 (40533831)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2015-03-31
• Keywords: うつ関連因子 / 肥満症 / 減量治療 / 心血管病 / ストレス

Outline of Annual Research Achievements

１、肥満症･糖尿病多施設前向きコホートとして、1334例の大規模データベース構築した。体組成、血液検査、動脈硬化の検査に加え、Self-rating Depression Scale (SDS)や心理的因子の調査を施行し、うつと肥満・減量治療・心血管指標の関連解析を行った。うつの割合は、SDSの有効回答が取得できた622例において、その平均は41.6点であり、うつ状態（39点以上）は373例（60%）、うつ症例（53点以上）は75例（12%）と健常人の報告より高率であった。減量治療開始1年で、減量非成功群やリバウンドが生じた群は初期のSDSが有意に高いことを認め、さらにリバウンド群では精神科通院歴を有する症例が多いことを認めた。更に、5年間の追跡症例数が460例に達し、脳心血管イベント発症は29例であった。イベント発症に対するCox分析の結果、初期SDSが高値であるほどイベント発症リスクが上昇する傾向を認めた（ハザード比：1.1, P=0.168 [年齢、性別調整]）。
２、肥満・糖脂質関連272遺伝子712SNPsを解析し、インスリン･レプチン抵抗性に関するPTP1BSNPsと減量治療非成功との有意な関連を認めた（論文投稿中）。また、うつ・報酬系に関連するSNPsを検討し、抗うつ薬・選択的セロトニン再取り込み阻害薬の標的であるセロトニントランスポーター遺伝子：5-HTTLPR SNPsに減量治療効果との関連する傾向を認めた。
３、肥満症患者を減量成功群（5例, 平均-15.4kg）、減量非成功群（3例, +4.8kg）、無変化群（3例, -1.3kg）に分類し、減量前後の血清にてメタボローム解析を行った。減量非成功群では成功群に比して、グルタミン酸（Glu）・アスパラギン酸（Asp）が顕著に高く、無変化群ではその中間となる傾向にあった。また、減量前後のGlu・Asp濃度差と体重の変化には正の相関を認めた（r=0.61, r=0.59）。以上、減量の成否はうつに関連のある脳内Glu・Asp濃度に影響を与える可能性が示唆された。