2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25750361
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
後藤 広昌 順天堂大学, 医学部, 助教 (90622746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低血糖 / プラーク破綻 |
Outline of Annual Research Achievements |
低血糖が心血管イベントを増加させるメカニズムとして、急激な低血糖は交感神経を活性化させ大量のエピネフリンを放出させ、心血管系へ影響を与えること、あるいは、低血糖は、炎症、血小板機能、凝固や線溶に影響を与え、心血管イベントの発症に関与している可能性が示されている。しかし、実際の作用機序や実際にプラークの破綻に低血糖が関わっているかは不明な点が多い。そこで、本研究は、動脈硬化モデルであるapoE欠損マウスのプラーク破綻に重症低血糖が影響を与えるか否かを検討した。apoE欠損マウスに普通食を投与し、12週令時点でマウスの右頸動脈に150µm径のワイヤーを伴走させた上で2か所結紮し、ワイヤーを取り除き、狭窄部を作成した(不安定プラーク形成モデル)。このマウスに5週間の間、週1回もしくは2回インスリンを腹腔内に投与し繰り返し低血糖を引き起こすモデルを作成した。コントロールには生食を注射した。その後、還流固定し、大動脈を抽出した。大動脈の切片を作成し、動脈硬化の面積を比較検討するため、切片をoil red O染色した。インスリンを注射すると実際に血糖値が50mg/dl以下程度に低下することを確認した。インスリンあるいは生食を投与中に3群間に摂食量や体重に大きな差を認めなかった。大動脈の切片に関しては、3群間でoil red O陽性面積に差を認めなかった。すなわち、低血糖の回数が増えても動脈硬化が促進することはなかった。以上より、apoE欠損マウスおいて低血糖は動脈硬化層の面積を増加させることはなかった。今後は、本研究の主要な目的であるプラークの質への低血糖の影響を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰り返す低血糖がアドレナリン(AD)作用の増加を介してラットの平滑筋細胞の増殖と血管傷害後の新生内膜形成を促進させることを既に論文報告した。即ち11週齢GKラットの頸動脈をバルーンで傷害し3日毎に生食を腹腔内投与する群(S群),インスリン(15U/kg)を投与し繰り返し低血糖を起こす群(I群),インスリン(15U/kg)と共にブドウ糖を投与し低血糖を回避する群(IG群)に分け低血糖の新生内膜形成に与える影響について検討した。更に低血糖によるAD増加が新生内膜形成に与える影響を検討するために生食投与+普通食群(SN群),生食投与+α1受容体拮抗薬(塩酸ブナゾシン)混餌群(SB群),インスリン投与による低血糖+普通食群(IN群),インスリン投与による低血糖+α1受容体拮抗薬混餌群(IB群)に分け、バルーンによる血管傷害後3日毎にこれらの注射を繰り返した。又培養ラットSMCを用いAD刺激による細胞増殖に関して検討した。S群およびIG群と比較しI群では低血糖と血中ADの増加を認めた。この結果I群ではS群およびIG群と比較し細胞増殖を伴って、頸動脈の血管傷害後の新生内膜形成は有意に増加していた。一方で低血糖によりADの増加を認めたもののα1受容体拮抗薬を投与しているIB群では、IN群と比較し細胞増殖の抑制と伴に血管傷害後の新生内膜形成の増加が有意に抑制されていた。In vitroではラットSMCはAD刺激により濃度依存的にBrdUで評価した増殖能の有意な増加を認めた。また、ADは細胞増殖シグナルERKの活性化とフローサイトメトリの検討から細胞のS 期へ移行を促進させていることがわかった。これらのADによる作用はα1受容体拮抗薬を同時に投与することにより有意に抑制された。本研究では予定実験はプロトコールどおり進み検体は既に抽出済で今後抽出した検体の病理学的な評価を中心に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では、apoE欠損マウスおいて低血糖は動脈硬化層の面積を増加させることはないことが確認できた。今後は、本研究の主要な目的である低血糖がプラークの質に影響を得与えるか否かを検討する。すなわち、マクロファージ、平滑筋細胞、弾性繊維や膠原繊維などに関して免疫染色を行い、プラークの大きさが変化しなくてもその質(脆弱性)が変化しているかを検討していく。①アザン染色で大動脈の中膜や動脈硬化層の弾性繊維を定量評価する。また、弾性繊維の断裂化などを観察する。②免疫染色で大動脈の中膜や動脈硬化層の平滑筋細胞やマクロファージを定量評価する。③TUNEL染色で大動脈の中膜や動脈硬化層のアポトーシス陽性細胞を定量評価する。④コッサ染色で大動脈の中膜や動脈硬化層の石灰化を定量評価する。低血糖がプラークの質に影響を与えることが確認できた場合には、ラットの平滑筋細胞を用いて、低血糖が平滑筋細胞のアポトーシスに関連するかをフローサイトメトリーやウェウスタンブロット法などでアポトーシスに関連する因子を検討していく。
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