2013 Fiscal Year Research-status Report
海洋シアノバクテリア由来新規マクロリド化合物の機能と応用
Project/Area Number |
25750386
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大野 修 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (20436992)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | biselyngbyaside / biselyngbyolide B / シアノバクテリア / アポトーシス / 小胞体ストレス / アフィニティー精製 / tomuruline / 血清飢餓 |
Research Abstract |
沖縄県石垣島で採集した海洋シアノバクテリアLyngbya sp.から、biselyngbyasideの新規類縁体であるbiselyngbyolide Bを単離し、構造を決定した。biselyngbyolide Bはbiselyngbyasideのアグリコンに対応する分子であり、biselyngbyolide Bが示したがん細胞に対する細胞増殖抑制活性はbiselyngbyasideの30-100倍強力な値であった。また、本化合物はがん細胞に対してアポトーシス誘導活性を示し、同濃度域において小胞体貯蔵のカルシウムイオンを放出するとともに小胞体ストレスマーカーの発現を誘導したことから小胞体ストレス誘導剤としての特性が明らかとなった。 また、biselyngbyasideのビオチン導入プローブを用いたアフィニティー精製により、小胞体膜上カルシウムATPaseであるSERCAがbiselyngbyasideの標的分子の候補であることが示す結果が得られた。さらに、biselyngbyaside 及びbiselyngbyolide Bはウサギ筋小胞体膜上SERCAのATPase活性を阻害することを見出した。 沖縄県石垣島で採集した海洋シアノバクテリアLyngbya sp.より単離した新規チアゾール含有ポリケチド化合物tomurulineの合成誘導体を用いた解析で、分子内のアクリルアミド部以外が活性発現に重要であることが判明した。また、細胞応答の観察結果より、tomurulineはがん細胞に血清飢餓選択的な細胞死を誘導することが判明した。このことから、tomurulineは低栄養状態に陥りやすいがん細胞に選択的に作用する薬剤として応用の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
biselyngbyaside類の細胞内シグナル伝達経路への作用の解析については、新たに単離したbiselyngbyolide Bとbiselyngbyasideについて解析を行い、小胞体ストレスマーカーの発現を明らかにできた。また、それらの化合物が、その上流の小胞体カルシウムATPaseであるSERCAへの阻害活性を有することも見出し、解明に近づきつつある。 biselyngbyasideのプローブ合成についても順調に進行し、目標としていた蛍光プローブとビオチンプローブの合成を完了させた。さらにビオチンプローブを活用し、アフィニティー精製を試みることにより、biselyngbyasideの標的分子の一つが上記のSERCAであることを示す結果を得るに至った。プローブの活用は26年度の計画内容であったので、この点については予定した以上の進展があった。 さらに、シアノバクテリアからの新たな物質探索で得たtomurulineについても機能解析を進めて活性発現に関わる部位の推定を試みた。さらに本化合物が血清飢餓選択的な細胞死誘導活性を有することも明らかにした。血清飢餓選択的な細胞死誘導活性には小胞体ストレスが関与することも報告されており、本知見はbiselyngbyaside類の機能解明とも関連する成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
biselyngbyaside類の細胞内シグナル伝達経路への作用の解析については、破骨細胞における評価を試みていく。特に、biselyngbyaside以外の小胞体ストレス誘導剤についても破骨細胞分化阻害活性が報告されているものがあるため、両活性を関連付けるシグナル伝達経路を明らかにする。 biselyngbyasideの合成プローブの活用については、蛍光プローブを活用して細胞内局在を明らかにする。25年度も試みたが信頼できるデータの取得には至らなかったため、再度検討を試み局在部位を明らかにする。特に小胞体への局在を証明するデータを得る。ビオチンプローブを活用した解析についても、SERCAがターゲットであることを支持しうるデータを収集する予定である。さらに既存のSERCA阻害剤との共存実験等を通じて結合部位を明らかにする。 tomurulineについては、小胞体ストレス誘導活性の有無を明らかにする予定である。小胞体ストレス誘導活性を有している場合は、biselyngbyaside類と同様にプローブ化の検討を行い標的分子を明らかにする。 また、既に検討を試みているがbiselyngbyaside生産シアノバクテリアの培養法の確立を目指す。これまでに、採集したbiselyngbyaside生産シアノバクテリアの混合体から単一のシアノバクテリアの培養は成功している。今後、培養できたシアノバクテリアのbiselyngbyaside生産能を検討し、生産が確認できればその生産条件を精査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品として購入予定であった、ゲル撮影装置・リポニクスImage Capture G3について、代替品を別予算で購入できたため、その分の費用を他の物品費、旅費、その他の経費にまわしたが、余剰分が生じたため次年度への繰り越すことにした。 前年度の余剰分は物品費に使用する予定である。翌年度分として請求した助成金は予定通り、物品費、旅費、その他の経費に使用する予定である。
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Research Products
(13 results)